中国東南部の原生代江南変動帯のプレート運動と地殻の発達

書誌事項

タイトル別名
  • Plate Movement and Crustal Evolution of The Jiangnan Proterozoic Mobile Belt, SOUTHEAST CHINA
  • 中国東南部の原生代江南変動帯のプレート運動と地殻の発達〔英文〕
  • チュウゴク トウナンブ ノ ゲンセイ ダイコウナン ヘンドウタイ ノ プレート

この論文をさがす

抄録

中国浙江省の龍門山(Longmenshan)および会稽山(Kuaijishan)付近から南南西へ延び,江西省の懐玉山(Huaiyushan),九嶺山(Jiulingshan),湖南省の雪蜂山(Xuefengshan)を経て,広西省の九万大山(Jiuwandashan)に至る地帯には,原生代の堆積岩類,変成岩類が分布している.この地域を原生代江南変動帯(Jiangnan Proterozoic mobile belt)と呼ぶ.この変動帯中の最古の地層群は四壁(Sibao)層群で,タービダイト,オフィオライト,カルクアルカリ火山岩類からなり,その時代は1400Ma.よりやや古い.ただし,花崗岩化された岩体に含まれる円磨されたジルコンの同位体年代は2830Ma.である.おそらく四堡層群中の砕屑物の供給源は,江南変説帯の北西方の揚子卓状地(Yangzi platform)にあったであろう.何故ならば,揚子大陸の南東方には四堡層群より古い大陸性地殻の存在は知られておらず,一方,四川省中部で掘られたボーリングによると,そこには先震旦系の花崗岩質片麻岩が分布しているからである.四堡層群は原生代前半の東安変動(Dong'anianorogeny)によって変形,変成作用を受けた.会稽山,九嶺山,九万大山に露出するオフィオライトの種類と分布はそれぞれの地域で特色がある.東安変動は,九万大山地域では華南古海洋プレートが揚子大陸プレートに対してオブダクションすることによって,九嶺山地域ではサブダクションすることによって,また会稽山地域ではサブダクションに伴ない,島弧-海溝系ができることによって,進行した.背弧盆地に形成された地層群の露出は,新しい地層が広くこの地域に発達しているため,きわめて限られているが,貴州省の梵浄山(Fanjingshan)地域では梵浄山層群として知られている.この背弧盆地あるいは縁海は,東安輪廻(Dong'anian cycle)につづく雪峰輪廻(Xuefengian cycle)の期間にも継続して存在していたらしい.安徽省の舗嶺(Puling)層群,張八嶺(Zhangbaling)層群がそれにあたる.梵浄山地域の縁海が閉じたのは,おそらく東安変動時にオブダクションがあったためであろう.雪蜂輪廻は,1400-800Ma.の間にあり,この期間に板渓(Banxi)層群が形成された,浙江省の龍門出地域では,凝灰岩や溶岩を挾む火山砕屑性堆積物が,東安変動時の島弧性火山岩類を不整合に覆って分布し,その下底には礫岩がある.砕屑物の大部分は,カルクアルカリ性火成岩の地域から供給されている.江西省の幕阜山(Mofushan)地域では,砕屑岩は古い地層を不整合で覆うが,その南の九嶺山地域では,この板渓層群とそれより古い地層との間には不整合はない.雪蜂山地域でも,層座関係は複雑で,一部では,板渓層群の下位に不整合が認められるが,この関係に側方へ移り変って整合となる.九嶺山地域や雪蜂山地域は,この時期には隆起した島弧地帯であったと考えられる.広西省の龍勝(Longsheng)地域では,板渓層群は砕屑岩とオフィオライトよりなるが,このオフィオライトには,海洋性地殻起源と考えられるものと島弧起源と考えられるものとがあって,それらは化学的特徴により識別できる.海洋性地殻起源のオフィオライトはプレートの説きによって当時の大陸縁辺部に形成され,ひき続く大成活動によって島弧型のオフィオライトができたと推定される.江西省の懐玉山地域にも板渓層群に相当する砕屑岩とオフィオライトが分布するが,その構造方向は徳興(Dexing)地域で急激に南北方向へ変わる.これはオブダクションが起ったからであろう.雪峰輪廻前期の落下肢変動(Laokedong orogeny)によって,江南変動帯の中部と東部が隆起した.後期に入ると安山岩-流紋岩を含む浙江省の上墅(Shangshu)層群や安徽省の井潭(Jingtan)層群が堆積した.これらは島弧型火山活動の特徴をもったものである.一方,その頃,海洋性ソレアイトを含む安徴省の舗嶺層群や張八嶺層群が背弧盆地に堆積している.このような岩相の性質とその分布は,落下崠変動の後に,再び海洋プレートのサブダクションのあったことを物語っている.原生代の江南変動帯は,800Ma.に最後の雪峰変動(Xuefengian orogeny)によって後背斜地帯となり,広域変成作用を受ける.こうして江南変動帯は東安,落下崠,雪峰と呼ばれる3回の変動を経て形成されたが,注目すべきことに,この期間には緑色片岩相から低度の角閃岩相程度の変成作用はあったものの,角閃岩相より高い変成作用は認められず,また,それに伴なう花崗岩化作用も知られていない.この地帯の花崗岩類は,江西省の九嶺出花崗岩が838Ma.,広西省の摩天嶺花崗岩は800Ma.の年代値をもっていて,この頃になり大陸性地殻を特徴づける花崗岩が広く形成されるようになった.

収録刊行物

  • 地球科学

    地球科学 39 (2), 156-166, 1985

    地学団体研究会

被引用文献 (1)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ