西南日本の遠洋性堆積物にふくまれるペルム/トリアス境界に関連して形成された有機質黒色泥岩の地球化学的検討

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タイトル別名
  • Geochemical characteristics of organic black mudstones related to the Permian/Triassic boundary in pelagic sediments of Japan
  • Geochemical characteristics of organic

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西南日本の層状チャートシークエンスには有機質黒色泥岩および珪質泥岩が含まれ,これらの岩石はトリアス紀最前期を特徴づける鍵層である.とくに有機質黒色泥岩は一般的な有機質泥岩と比較しても高い有機炭素を含有する.岩石の分析には蛍光X線分析および,放射化分析を行った.それにより,遠洋域において有機物が退席した海洋環境の変化を解明することを目標としている.分析結果は次のように要約される.(1)有機質黒色泥岩と珪質泥岩は一般にPAAS(post-Archean Australian Shales)で規格化した結果,K_2O, Rb, Cs, Hf, NbおよびTh等の元素に富んでいる.Cs/Rb比においても両者はPAASと類似の組成を示している.(2)TiO_2/SiO_2比は一般的な層状チャートや珪質泥岩と比較してより高い値を示す.そして,Cr,YおよびZrは重希土類の濃集と相関をもち,これらは塩基性火成岩から由来した可能性がある.(3)Euの負異常は認められるが,一般の珪質火砕岩の値ほど低くない.また,中・重希土類の濃集は中性ないし塩基性の岩石の寄与が考えられる.(4)非調和元素についてOIT(Oceanic island tholeiite)で規格化したスパイダーダイヤグラムにおいて有機質黒色泥岩や珪質泥岩はCFB(Continental flood basalt)に類似したパターンを示す.(5)CaO, MnOやCoなどの濃集度は低く,(6)Uの濃集が有機質黒色泥岩で明瞭であることから,これらはCCD以下の還元的環境で堆積したと考えられる.有機質黒色泥岩は一般に基礎生産が高い海洋で形成されると考えられる.ペルム/トリアス紀境界直後にこのようか泥岩が形成されたことは,その岩石の地球化学的特徴から大陸の洪水玄武岩の噴出との関係が考えられる.ペルム紀の終焉において生態系の破壊が生じた後,境界以降においてそれらの回復に向かったと考えられる.活発な海洋の循環と有機質黒色泥岩の形成はGriesbachian初期の急速な海進と関連すると考えられる.

収録刊行物

  • 地球科学

    地球科学 50 (2), 111-124, 1996

    地学団体研究会

被引用文献 (3)*注記

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参考文献 (49)*注記

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