薬理学における代替動物実験の展開  4  ヒト体内動態把握を目指すin vitro複合細胞培養システムの可能性

  • 酒井 康行
    東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 東京大学生産技術研究所
  • 藤井 輝夫
    東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター
  • 迫田 章義
    東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター

書誌事項

タイトル別名
  • Feasibility of in vitro multi-compartment cell culture systems for toxicokinetic analysis in humans
  • ヒト体内動態把握を目指すin vitro複合細胞培養システムの可能性
  • ヒト タイナイ ドウタイ ハアク オ メザス in vitro フクゴウ サイボウ バイヨウ システム ノ カノウセイ

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抄録

動物実験の削減や代替を行う上で,摂取された物質の体内動態の考慮が極めて重要であるが困難な課題である.これに応えるために,個別のin vitro試験から得られた生物学的情報を,生理学的毒物動力学モデル上で積み上げることで,ヒト影響を予測するアプローチが追及されている.しかしながら,個体における未解明な動的·システム的な応答は,そのままでは数理モデルに記述されない.この欠点を補うために,複数の臓器細胞を相互作用させつつ培養するin vitro複合細胞培養システムの研究が行われている.このようなシステムは,コーネル大学のグループによって初めて開発された.これは静脈投与されたナフタレンが肝で代謝活性化を受けた後,肺に特異的毒性を与えるプロセスの再現に焦点を当てた灌流培養型のシステムであった.これに対して筆者らは,経口摂取された物質の動態予測を目指し,市販のカルチャーインサートを用いる簡便な小腸膜・肝組織複合培養系を開発,代謝や能動輸送といった初回通過効果に関わる複雑なプロセスを簡便に評価可能であることを示した.さらに灌流型システムも開発し,両細胞を良好な条件の下で培養液を介して連続的に接触させることで,小腸・肝の相互作用と思われる解毒酵素活性の亢進を観測した.In vitro複合培養系には以上のような利点があるものの,一般に運転が極めて煩雑でとても汎用の評価系とはなりえない.そこで,マイクロ流体デバイス技術の活用が追究され,装置の小型簡便化に加えて,in vivoと同レベルの細胞密度の達成やin vivo臓器微細構造の再現などの効果が期待されている.今後は,細胞の応答を非破壊観測する検出系を組み込むことで,新規の評価系へと発展することが望まれる.<br>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 125 (6), 343-349, 2005

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (21)*注記

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