茶浸出液中のアスコルビン酸の安定性の解明

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タイトル別名
  • Studies on the Stability of Ascorbic acid in Tea Infusion
  • チャシンシュツエキチュウ ノ アスコルビンサン ノ アンテイセイ ノ カイメイ

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説明

茶浸出液を各温度に保温し,そのアスコルビン酸量を経時的に定量し,分解量を測定したところ,100℃では60分でほとんど分解されたが,21℃(室温)では2時間でもわずかに1%程度が減少しただけであることが明らかになった。また浸出液を50℃に静置すると,8点の平均で約10.3%のアスコルビン酸が減少し,70℃では47.9%が減少した。蒸留水に溶解したアスコルビン酸は50℃60分で10.3%,70℃60分で47.9%減少した。このことから茶浸出液のアスコルビン酸は分解しにくいことがわかった。50℃から80℃におけるアスコルビン酸の分解量をアレニウス式に代入し活性化エネルギーを算出したところ,8点の平均値で14.71kcal/モルとなった。<BR>茶浸出液中のアスコルビン酸の安定化因子は,一煎目に多く,三煎目には少ないことが明らかになった。しかし三煎目にシアン化ナトリウムを添加ナると,一煎目以上にアスコルビン酸が安定化した。次に安定化因子を検索したところ,安定化作用は酢酸エチルで抽出され,ポリクラールATに吸着するポリフェノール類,50%エタノールで沈殿するペクチンなどの高分子化合物,アセトンで沈殿する水溶性の強いフラボノイドの画分に検出され,複合的なものであることが明らかになった。<BR>モデル実験的にカテキン類,テァニン,カフェインのアスコルビン酸の安定化について検討したところ,エピカテキンガレート,エピガロカテキンガレートにその作用が認められた。またその他のものとしてはクエン酸とペクチンにも安定化作用が認められ,リンゴ酸,フマル酸,ショ糖,ブドウ糖,果糖などには安定化作用が認められなかった。一方金属イオンを茶浸出液に添加したところ,鉄イオン,銅イオンに著しいアスコルビン酸の分解促進作用が認められた。アスコルビン酸水溶液にシァン化ナトリウム,エチレンジアミンテトラァセテートなどを添加し微量の金属イオンを除去すると,アスコルビン酸は非常に安定化し,茶浸出液よりもむしろ安定になった。このことから茶浸出液においてアスコルビン酸が安定である原因は,ポリフェノール類などを始め,銅や鉄などと相互作用を持っ成分がかなり大量に存在するためであると推定された。<BR>終りに,本実験を行なうに際し種々御助言いただぎました果樹試興津支場荒木忠治氏,および当研究室西條了康氏に深く感謝いたします。

収録刊行物

  • 茶業研究報告

    茶業研究報告 1982 (56), 57-64, 1982-12-01

    Japanese Society of Tea Science and Technology

参考文献 (4)*注記

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