内耳蝸牛内高電位の成立機構の解明

  • 日比野 浩
    大阪大学 大学院医学系研究科 薬理学講座 分子細胞薬理学

書誌事項

タイトル別名
  • Analysis of the mechanism underlying formation of the endocochlear potential in the inner ear
  • 受賞講演総説 内耳蝸牛内高電位の成立機構の解明
  • ジュショウ コウエン ソウセツ ナイジ カギュウナイ コウデンイ ノ セイリツ キコウ ノ カイメイ

この論文をさがす

抄録

内耳蝸牛を満たす内リンパ液は,+80 mVの高電位を帯びた特殊な細胞外液である.この蝸牛内高電位は聴覚機能に必須である.高電位の維持には上皮組織である血管条を介した,全蝸牛レベルでのK+循環が重要とされてきた.血管条は,単層の辺縁細胞からなる内層と,基底・中間細胞からなる外層から構成される.内層は内リンパ液に,外層は通常の細胞外液に近いイオン組成を持つ外リンパ液に接する.2層に囲まれた血管条内の細胞外空間は~+90 mVの高電位を示し,これが蝸牛内高電位の主要素であると予想されてきた.また,血管条細胞外空間の高電位の維持には,K+チャネルが深く関わると考えられてきた.しかし,蝸牛内高電位の成立機構の多くは不明であった.本研究により,内向き整流性K+チャネルKir4.1が血管条に強く発現することが明らかとなった.Kir4.1は血管条における唯一の機能的な内向き整流性K+チャネルであった.後に,Kir4.1は中間細胞の頂上膜に局在することが報告された.生理実験により,血管条細胞外空間の高電位の大部分は,Kir4.1を介して発生したK+拡散電位であることが示された.また,血管条細胞外空間は,隣り合う内・外リンパ液から電気的に隔離されており,これが高電位の維持に必要であることも明らかとなった.更に,辺縁細胞の頂上膜に分布する電位依存性K+チャネルKCNQ1/KCNE1を介して発生する拡散電位も,蝸牛内高電位の成立に大きく寄与することが判明した.故に,蝸牛内高電位は,血管条の2つのK+拡散電位と電気的絶縁状態により成立する.<br>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 133 (5), 247-251, 2009

    公益社団法人 日本薬理学会

被引用文献 (1)*注記

もっと見る

参考文献 (39)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ