補腎剤による血管弛緩作用の加齢変化と病態依存性

書誌事項

タイトル別名
  • Kampo pharmacology: modulation by Hojin formulations of age-dependent vasodilatation and the dependence of diseases
  • ホジンザイ ニ ヨル ケッカン シカン サヨウ ノ カレイヘンカ ト ビョウタイ イソンセイ

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説明

東洋医学的概念,五臓の「腎」は先天の生命力を表し,老化予防・抗病力の賦活を意味する.更年期症状,冷え,全身倦怠,水分代謝の機能低下,頻尿,夜間頻尿,尿失禁,浮腫,前立腺肥大,性欲減退,勃起障害などの臨床症状を腎虚という.腎虚に対して処方される補腎剤には六味丸・八味地黄丸・牛車腎気丸があり,六味丸に2生薬ずつ添加した生薬構成をしている.補腎剤は若年ラット(10~15週齢)と高齢ラット(35週齢以上)で血管弛緩作用に違いを示した.単一フィトケミカル(植物由来機能物質)では薬理効果の加齢的減衰が著明であるが,多成分複合薬(漢方薬を含む)は抗加齢効果を表す.六味丸は,高齢ラットでは血管内皮依存性弛緩作用が弱くなった.高齢ラットで,八味地黄丸は六味丸より強い弛緩作用を表すが,内皮依存性弛緩作用はみられず,平滑筋作用が強い.牛車腎気丸は高齢ラットで弛緩作用は増強し,血管内皮依存性弛緩作用は保たれた.含有生薬の違い(種類,含有数)から,薬理作用に加齢的差異が表れたと考えられた.一方,糖尿病ラットでは,血管弛緩作用の加齢変化は著明に見られなかった.臨床適用では,長期投与によって主訴症状を改善した.同時に圧脈波解析では動脈スティフネス(CAVI)も著明に低下させた.病態下では急性投与での効果発現は表れにくく,長期投与の必要性が示唆された.

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 147 (3), 144-147, 2016

    公益社団法人 日本薬理学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (12)*注記

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