新規C型肝炎治療薬エルバスビル(エレルサ<sup>®</sup>錠50 mg)・グラゾプレビル(グラジナ<sup>®</sup>錠50 mg)の薬理作用と臨床試験成績

書誌事項

タイトル別名
  • Preclinical and clinical properties of elbasvir (ERELSA<sup>®</sup> Tablets 50 mg) and Grazoprevir (GRAZYNA<sup>®</sup> Tablets 50 mg), novel therapeutic agents for hepatitis C
  • 新薬紹介総説 新規C型肝炎治療薬エルバスビル(エレルサ錠50mg)・グラゾプレビル(グラジナ錠50mg)の薬理作用と臨床試験成績
  • シンヤク ショウカイ ソウセツ シンキ Cガタ カンエン チリョウヤク エルバスビル(エレルサジョウ 50mg)・ グラゾプレビル(グラジナジョウ 50mg)ノ ヤクリ サヨウ ト リンショウ シケン セイセキ

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抄録

<p>エルバスビル(エレルサ®)+グラゾプレビル(グラジナ®)併用療法は,セログループ1(genotype 1)のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変を対象とした,インターフェロン(IFN)フリーの直接作用型抗ウイルス薬(DAA)による治療法である.エルバスビルはC型肝炎ウイルス(HCV)の非構造タンパク質5A(NS5A)複製複合体の阻害薬であり,グラゾプレビルは非構造タンパク質3/4A(NS3/4A)プロテアーゼ阻害薬である.HCVレプリコン細胞を用いたin vitro試験において,広範なgenotype(GT)に対してエルバスビルはpMレベルの,また,グラゾプレビルはnMレベル(いずれもEC50値)の抗ウイルス活性を示し,GT1aレプリコン細胞を用いた両阻害薬のin vitro併用試験では,複製が相加から相乗的に阻害された.さらに,NS3/4A,NS5A,及びNS5Bの各領域でみられる耐性変異(RAS)による,エルバスビル+グラゾプレビル併用に対する交差耐性はほとんどみられなかった.日本人HCV(GT1)慢性感染肝炎及び代償性肝硬変患者を対象とした国内第Ⅱ/Ⅲ相試験(058試験)では,エルバスビル50 mg及びグラゾプレビル100 mgの1日1回12週間併用投与の終了後12週時の持続的ウイルス陰性化(SVR12)率は,それぞれ96.5%(219/227例:慢性肝炎)及び97.1%(34/35例:代償性肝硬変)であり,本併用療法の高い有効性が示された.このとき,治療期間中の非奏効はみられず,前治療の有無及び反応性,IL28B遺伝子多型,食事の有無,肝硬変の有無,ベースライン時点のNS5A又はNS3領域のRASの有無はSVR12率に影響しなかった.また,海外第Ⅱ/Ⅲ相試験(052試験)又は海外第Ⅲ相試験(061試験)では,慢性腎臓病やHIV/HCV重複感染を有する患者集団に対しても,エルバスビル+グラゾプレビルの併用又はエルバスビル/グラゾプレビル配合薬の有効性が認められた.さらに,各種臨床薬物相互作用試験の結果から,強力なCYP3A阻害薬との併用によるエルバスビル及びグラゾプレビルの曝露量の増加は概して治療域の範囲内であることが示唆されており,胃酸抑制薬との併用でも臨床的に意味のある影響はみられなかった.よって,特段の注意を要さずにアゾール系/マクロライド系抗生物質を含むCYP3A阻害薬や胃酸抑制薬との併用が可能と考えられた.また,エルバスビル+グラゾプレビル併用療法によるCYP3Aに対する阻害作用は弱くCa拮抗薬との併用においても特段の注意は必要ないと考えられた.エルバスビル及びグラゾプレビルは,2016年4月に厚生労働省より優先審査品目に指定され,同年9月に「セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」の効能・効果を有する1日1回併用投与の治療薬として製造販売承認を得た.現在,エルバスビル+グラゾプレビル併用療法は,DAA治療歴のないC型肝炎(GT1)の治療第一選択として推奨されており,透析患者を含む慢性腎臓病(CKD)ステージ1~5の腎障害患者においても投与可能である.エルバスビル+グラゾプレビル併用療法は,初回治療例や前治療再燃例を含む治療歴をはじめ種々の背景を有する幅広いHCV(GT1)慢性感染患者で有効であり,さらに耐性変異症例においても高い抗ウイルス効果を示すことから,C型慢性肝炎の治療に大きく貢献するものと期待される.</p>

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