熱帯病制圧に向けた治療薬の研究開発及び普及~製薬企業の取り組みの一例としての我々の活動の紹介~

  • 浅田 誠
    エーザイ株式会社 グローバルアクセスストラテジー室

書誌事項

タイトル別名
  • Research & development and distribution of medicines for eliminating tropical diseases: Introduction of our activities as an example of the approach by pharmaceutical industries
  • ネッタイビョウ セイアツ ニ ムケタ チリョウヤク ノ ケンキュウ カイハツ オヨビ フキュウ : セイヤク キギョウ ノ トリクミ ノ イチレイ ト シテ ノ ワレワレ ノ カツドウ ノ ショウカイ

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抄録

<p>顧みられない熱帯病(neglected tropical diseases:NTDs)に罹患している患者さんは世界中の貧困国を中心に10億人以上存在し,三大感染症(マラリア,HIV/AIDS,結核)とともに,身体的障害や偏見による労働力の低下,経済成長の抑制,衛生環境などの社会インフラの未整備の一因となっており,それがさらなる患者を生み出すという負のスパイラルを招いている.これらの疾患の制圧のためには,有効な薬剤を開発し,患者さんに広く提供する必要があり,製薬企業はこれらの熱帯病制圧に向けて大きな役割を担うことが期待されている.しかしながら,その使命を果たすためには,製薬企業が従来経験したことのない幾つものハードルを越えなくてはならない.もちろん薬剤の開発コストと利益の不均衡の問題は大きいが,それ以外にも例えば,熱帯病に関する知識や研究材料が企業内部に保有されていない,熱帯病の蔓延地域で臨床試験を行うにも当該国規制当局との交渉経験や治験ネットワークがない,あるいは,薬剤をお届けするための販路も構築されていないなど,一企業が単独で向き合うにはあまりにも高い壁が存在する.近年,こうした状況を緩和するために様々なProduct Development Partners(PDPs)が設立され,企業,アカデミアのそれぞれの専門性を取り入れた国際的な協働の枠組みが構築されており,またその活動を推進する資金提供団体も設立されて,熱帯病に有効な薬剤開発が強力に促進されつつある.本論では,製薬企業の取り組みの一例として,弊社の熱帯病薬開発の活動を紹介し,特にNTDs治療薬開発に特化したPDPとして著明なDrugs for Neglected Diseases initiative(DNDi)と共同して進めているシャーガス病とマイセトーマ(真菌性菌腫)に関する経験を述べる.</p>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 149 (5), 225-230, 2017

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (13)*注記

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