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- 仁木 一郎
- 大分大学 医学部 薬理学教室
書誌事項
- タイトル別名
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- Production of hydrogen sulfide and its protective role in the pancreatic B-cell
- スイB サイボウ ニ オケル リュウカ スイソ サンセイ ト サイボウ ホゴ サヨウ
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説明
硫化水素(H2S)は細胞で産生されるガス性のメッセンジャーであり,その作用は多岐に及ぶ.私たちは膵B細胞を研究の対象としてH2Sの機能と産生調節について検討してきた.その結果,(1)このガスがインスリン分泌を抑制すること,(2)酸化ストレスを軽減することによって膵B細胞を障害から保護すること,(3)小胞体ストレスによる細胞死には影響を与えないこと,(4)グルコースによりH2Sの産生が増えることを報告してきた.さらに,(5)分泌刺激濃度のグルコースがH2S産生酵素であるcystathionine-γ-lyase(CSE)の発現を誘導することを発見した.ここで不思議なのは,なぜインスリン分泌刺激であるグルコースが,このホルモンの分泌を抑制するH2Sの産生を増すかである.これについて私たちは,高濃度のグルコースによってもたらされる酸化ストレスや細胞内Ca2+の恒常的な上昇に起因する障害から,H2Sが膵B細胞自らを保護する安全弁の役目を果たす,と考えている.しかし,H2S産生酵素の誘導や,その膵B細胞死に対する影響に関する結果は報告によって異なり,この方面のH2S研究を論文でフォローする場合にしばしば当惑することもあるのではないかと思う.この稿では,そういった報告間の齟齬にも触れつつ,私たちが自らの知見をもとに立てた「H2Sが膵B細胞に内蔵されたブレーキ(intrinsic brake)である」という仮説を紹介する.
収録刊行物
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- 日本薬理学雑誌
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日本薬理学雑誌 139 (1), 13-16, 2012
公益社団法人 日本薬理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001204275028480
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- NII論文ID
- 10030455969
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- NII書誌ID
- AN00198335
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- ISSN
- 13478397
- 00155691
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- NDL書誌ID
- 023419717
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- NDLサーチ
- Crossref
- CiNii Articles
- KAKEN
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可