プラスグレル塩酸塩(エフィエント<sup>®</sup> 錠 3.75 mg・5 mg)の薬理学的,薬物動態学的特性と臨床試験成績

  • 杉立 収寛
    第一三共株式会社 研究開発本部 生物医学研究所
  • 栗原 厚
    第一三共株式会社 研究開発本部 薬物動態研究所
  • 谷澤 公彦
    第一三共株式会社 研究開発本部 開発計画部
  • 井上 孝司
    第一三共株式会社 研究開発本部 開発計画部

書誌事項

タイトル別名
  • Pharmacological, pharmacodynamics, and clinical profile of prasugrel hydrochloride (Efient<sup>®</sup> tablets 3.75 mg • 5 mg)
  • 新薬紹介総説 プラスグレル塩酸塩(エフィエント錠3.75mg・5mg)の薬理学的,薬物動態学的特性と臨床試験成績
  • シンヤク ショウカイ ソウセツ プラスグレル エンサンエン(エフィエントジョウ 3.75mg ・ 5mg)ノ ヤクリガクテキ,ヤクブツ ドウタイガクテキ トクセイ ト リンショウ シケン セイセキ

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抄録

プラスグレルは第三世代のチエノピリジン系抗血小板薬であり,他のチエノピリジン系抗血小板薬と同様に活性代謝物を介して抗血小板作用を発現するが,作用発現が早く,強力で安定した抗血小板作用を示す.また,プラスグレル活性代謝物は,血小板上のADP 受容体の一種であるP2Y12 に選択的かつ非可逆的に結合して作用を発現し,強力な抗血栓,病態モデル改善作用を示す.プラスグレルの代謝を第二世代のクロピドグレルと比較すると,いずれの薬剤もチオラクトン中間体を経て活性代謝物が生成されるが,チオラクトン中間体の生成には両剤で大きな違いが存在する.プラスグレルは小腸での吸収時に速やかに加水分解を受けチオラクトン中間体へと代謝されるのに対し,クロピドグレルは小腸では殆ど代謝を受けずに,肝臓において加水分解を受け,大部分は活性のないカルボン酸体へと変換してしまうため,プラスグレルの方が活性代謝物の産生効率が高い.また,クロピドグレルでは,加水分解を免れた化合物のみチトクロームP450(CYP)による酸化代謝を受けチオラクトン中間体が生成するが,この酸化代謝にはCYP2C19 の寄与が大きいため,その遺伝子多型の影響を受けやすい.プラスグレルの臨床試験は,海外において先行して実施され,“強力な効果,迅速な作用発現,一貫した反応性”というコンセプトのもと,クロピドグレルを対照薬とした差異化試験が実施され,最終的に,大規模なイベント試験である第Ⅲ相試験(TRITON-TIMI 38 試験)において,平均15 ヵ月の観察期間で心血管死亡,心筋梗塞ならびに脳卒中の複合エンドポイントは19%有意に低下(12.1% vs. 9.9%)した.国内では,海外用量とは異なる日本人に適した用量を慎重に選定し,第Ⅲ相試験としてPRASFIT-ACS およびPRASFIT Elective 試験が実施され,これらの試験成績に基づき 2013 年6 月に承認申請が行われ,2014 年3 月に国内に於ける製造販売承認を取得し,現在上市されている.

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 144 (5), 239-249, 2014

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (42)*注記

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