骨粗鬆症治療剤イバンドロネート静注剤の 薬理作用と臨床効果

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タイトル別名
  • Pharmacological profile and clinical evidence in patients with primary osteoporosis treated with intravenous ibandronate
  • 新薬紹介総説 骨粗鬆症治療剤イバンドロネート静注剤の薬理作用と臨床効果
  • シンヤク ショウカイ ソウセツ コツソショウショウ チリョウザイ イバンドロネート ジョウチュウザイ ノ ヤクリ サヨウ ト リンショウ コウカ

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説明

イバンドロネート(イバンドロン酸ナトリウム水和物:IBN)静注剤は,骨粗鬆症を適応症として2013年8月より日本国内で発売された月1回ビスホスホネート(BP)注射剤である.IBNは,骨基質であるハイドロキシアパタイトに対する高い親和性を有しており,投与後骨に分布する.破骨細胞に取り込まれた後ファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害し,これにより破骨細胞の機能を抑制することで骨吸収抑制作用を示すと考えられる.閉経後骨粗鬆症の病態モデルである卵巣摘除モデルを用いた検討では,IBNは,卵巣摘除ラットの骨密度や骨代謝マーカーを用量依存的に改善し,卵巣摘除サルにおいて骨構造の破綻を抑制した.さらにIBNは,活性型ビタミンD3製剤であるエルデカルシトール(ELD)と併用した場合に相加的な骨密度の増加作用ならびに骨吸収の抑制作用を示した.BP製剤は,多くの臨床試験で骨折抑制効果が証明された骨粗鬆症治療薬であり,海外および国内において第一選択薬となっている.静注BP 製剤は経口製剤と比較し,服薬時の煩雑な制約がなく確実に投与することが可能であり,さらに上部消化管障害の軽減も期待される.IBNは,BP製剤の中でも,1ヵ月以上の投与間隔で治療可能な利便性の高い骨粗鬆症治療薬として,国内外で,経口剤と注射剤の2つの剤形で開発が進められてきた.国内では注射剤の開発が先行し,検証的試験として60歳以上の原発性骨粗鬆症患者を対象にした無作為化二重盲検群間比較試験が実施された.その試験の結果,3年間の非外傷性椎体骨折発生頻度(95%信頼区間)は,IBN 1 mg 群(イバンドロン酸として1 mg を1ヵ月に1回静脈内投与)および対照群(リセドロン酸ナトリウムとして2.5 mg を連日経口投与)で,それぞれ16.1%(12.2~19.9%)および17.6%(13.6~21.6%)であった.非外傷性椎体骨折発生頻度の層別Cox回帰分析による対照群に対する本剤1 mg群のハザード比(90%信頼区間)は0.88(0.65~1.20)であり,IBNのリセドロネートに対する非劣性が証明された(非劣性限界値1.55).また,これまでと同様の良好な安全性についても確認された.このように,IBN静注剤は,既存BPに匹敵する有効性を有しており,さらに投与間隔,投与経路,安全性の面から,新たな選択肢として骨粗鬆症治療に貢献するものと期待される.

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 143 (6), 302-309, 2014

    公益社団法人 日本薬理学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (14)*注記

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