悪性軟部腫瘍に対するエリブリンメシル酸塩(ハラヴェン<sup>®</sup>静注1 mg)の臨床効果と抗腫瘍メカニズムについて
書誌事項
- タイトル別名
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- Clinical benefit of eribulin (Halaven<sup>®</sup>) in the treatment of advanced soft tissue sarcoma patients and the novel anti-tumor mechanisms
- 新薬紹介総説 悪性軟部腫瘍に対するエリブリンメシル酸塩(ハラヴェン静注1mg)の臨床効果と抗腫瘍メカニズムについて
- シンヤク ショウカイ ソウセツ アクセイナンブ シュヨウ ニ タイスル エリブリンメシル サンエン(ハラヴェン ジョウチュウ 1mg)ノ リンショウ コウカ ト コウシュヨウ メカニズム ニ ツイテ
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抄録
<p>エリブリンは新規の微小管ダイナミクス阻害薬であり,進行又は再発乳がんの治療薬として広く使用されている.進行又は再発悪性軟部腫瘍患者を対象にした海外第Ⅱ相試験では,主要評価項目である12週時無増悪生存率は脂肪肉腫患者にて46.9%,平滑筋肉腫31.6%,滑膜肉腫21.1%,その他の肉腫19.2%であった.国内第Ⅱ相試験では,脂肪肉腫及び平滑筋肉腫で60.0%,その他の悪性軟部腫瘍で31.3%であり,両試験において良好な有効性が確認された.海外第Ⅲ相試験では,主要評価項目である全生存期間はエリブリン群では13.5ヵ月であり,対照薬であるダガルバジン療法の11.5ヵ月に比べ有意な延長が認められた.エリブリンの延命効果は脂肪肉腫患者において特に顕著であり,エリブリンは15.6ヵ月,ダガルバジンは8.4ヵ月であった.主な副作用は好中球減少,白血球減少,貧血など従来の乳がんでの報告と同様であった.これらの結果よりエリブリンは2016年に,悪性軟部腫瘍に対する治療薬として国内承認を受けた.一方,非臨床研究においてエリブリンは,細胞分裂に重要な微小管重合を阻害し,in vitroにおける増殖抑制作用とin vivo(マウス)における抗腫瘍作用が報告されているが,さらに近年,腫瘍組織内の血流を改善しがんの微小環境に作用することも明らかになった.さらに,脂肪肉腫細胞にエリブリンを添加すると脂肪細胞分化マーカーMYLK,C/EBPβ,KIF23の発現が亢進し,平滑筋肉腫細胞では平滑筋細胞分化マーカーCNN1の発現亢進が認められたことから,分化誘導作用を有することが明らかになった.以上の結果よりエリブリンは,肉腫細胞の増殖阻害作用,腫瘍組織の血流改善作用に加え,肉腫細胞の分化誘導作用により悪性度を低下させた結果,抗腫瘍効果,延命効果を発揮していると思われる.今後は様々なタイプの肉腫の患者において,有用性の検証と延命メカニズムの解析が進められることが期待される.</p>
収録刊行物
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- 日本薬理学雑誌
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日本薬理学雑誌 148 (6), 329-333, 2016
公益社団法人 日本薬理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001204275360896
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- NII論文ID
- 130005170824
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- NII書誌ID
- AN00198335
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- ISSN
- 13478397
- 00155691
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- NDL書誌ID
- 027776817
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- PubMed
- 27904013
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- NDL
- Crossref
- PubMed
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可