免疫不全NOGマウスを用いた「ヒト化マウス」

  • 末水 洋志
    公益財団法人実験動物中央研究所 バイオメディカル研究部

書誌事項

タイトル別名
  • “Humanized mice” produced by using immunodeficient NOG mice
  • メンエキ フゼン NOG マウス オ モチイタ 「 ヒトカ マウス 」
  • “Humanized mice” produced by using immunodeficient NOG mice

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説明

ヒトの細胞・組織・臓器を有するヒト化マウスは,2000年代前半のNOGマウスをはじめとする新しい重度免疫不全マウスの開発によって大きな進展をみせた.この免疫不全マウスを使い,血液,免疫,感染症や腫瘍など,様々な研究分野でヒト化モデルが作製された.ヒト造血幹細胞移植により構築したヒト化造血モデルは広汎な細胞系列,特にヒトT/B細胞への増殖分化が認められることから,ヒトCD4陽性T細胞に感染して後天性免疫不全症候群を起こすヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus: HIV)や,成人T細胞性白血病を起こすヒトTリンパ球向性ウイルス1型(human T-lymphotropic virus-1: HTLV-1),主にB細胞に感染してリンパ球腫瘍性増殖疾患を起こすエプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus: EBV)等のヒト感染症モデルに応用されている.現在ではこの免疫不全NOGマウスにさらなる改良を加え,よりヒトに近いヒト化マウスの作製も試みられている.また,薬物代謝酵素の特性に種差があることや,肝炎など一部の感染症では宿主特異性に違いがあることから,このような問題を克服するためヒト化肝臓マウスも開発されている.ヒト化肝臓マウスは肝傷害を発症する改良型NOGマウスにヒト肝細胞を移植することにより肝臓を再構築するものである.再構築したヒト化肝臓は,遺伝子発現パターンや酵素の肝小葉内分布,薬物代謝プロフィール解析から「ヒトの肝臓」として機能するものと思われ,今後,新薬開発や再生医療の発展に貢献するモデルになることが期待される.

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 139 (5), 203-206, 2012

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (44)*注記

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