イネの穂ばらみ期耐冷性に及ぼす相対的根量および根の生理的活性の変化の影響

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タイトル別名
  • Effects of the Amount and Activity of Roots on the Cool-Weather Resistance in Rice Plants
  • イネ ノ ホバラミ キ タイレイセイ ニ オヨボス ソウタイテキ コンリョウ オヨビ ネ ノ セイリテキ カッセイ ノ ヘンカ ノ エイキョウ

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抄録

イネの穂ばらみ期冷害において,根の量あるいは生理的活性が耐冷性と関係があることが知られている.著者らは前報において,地上部の量あるいは穎花数に対する相対的な根の量が耐冷性と相関があることを明らかにした.本報では,耐冷性に関する根の役割を解明する目的で,主にササニシキを用い,ポット実験(水耕あるいは土耕)によって,剪根や呼吸阻害剤の処理により実験的に相対的根量あるいは生理的活性を変化させ,耐冷性との関係を調べた.冷害危険期冷温処理の5日前(花粉母細胞分化期)頃に剪根(約75%切除)あるいは分げつ切除(全分けつ)の処理を行った場合には,冷温処理区の受精率が(無切除区に対して)変化しなかった.しがし,1次枝梗分化開始期前後に剪根処理を行った場合には,冷温処理区の受精率が低下した.また,この時期からの呼吸阻害剤(アジ化ナトリウム)処理によっても冷温処理区の受精率の低下が起こった.さらに,グルコース施用によって土壌を還元状態にして根の生理的活性を弱めた場合に,耐冷性極強のひとめぼれでは冷温処理区の受精率が低下しながったが,耐冷性弱のササニシキでは低下が見られた.以上の結果は,相対的根量および根の生理的活性が耐冷性に影響を及ぼすことを証明している.ただし,処理時期を変えた剪根実験の結果から,1次枝梗分化開始期頃の処理では耐冷性の低下が見られたが,冷害危険期直前の処理では耐冷性の低下が明らかでながった.この事実は,相対的根量あるいは根の生理的活性の影響が危険期に冷温に遭遇した状況で直接に起こるのではなく,それ以前に,例えば,花粉形成過程などへの影響を通して起こっている可能性を示唆している.

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