群集構造決定機構に対する環境と空間の相対的重要性 : 岩礁潮間帯における生物群間比較(<特集>生物の空間分布・動態と生態的特性との関係:マクロ生態学からの視点)

  • 奥田 武弘
    東北区水産研究所八戸支所資源評価研究室:(現)遠洋水産研究所外洋生態系研究室
  • 野田 隆史
    北海道大学地球環境科学研究院
  • 山本 智子
    鹿児島大学水産学部附属海洋資源環境教育研究センター
  • 堀 正和
    瀬戸内海区水産研究所藻場・干潟環境研究室
  • 仲岡 雅裕
    北海道大学北方生物圏フィールド科学センター水圏ステーション厚岸臨海実験所

書誌事項

タイトル別名
  • Relative contribution of environmental and spatial processes on determining community structure : a comparison among taxa in rocky intertidal assemblages(<Feature>Species distribution, dynamics and ecological traits: a macroecological perspective)
  • 群集構造決定機構に対する環境と空間の相対的重要性--岩礁潮間帯における生物群間比較
  • グンシュウ コウゾウ ケッテイ キコウ ニ タイスル カンキョウ ト クウカン ノ ソウタイテキ ジュウヨウセイ ガンショウ チョウカンタイ ニ オケル セイブツグン カン ヒカク

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抄録

マクロ生態学で対象とされる様な大きな空間スケールでは、生物群集は内外に環境の不均一性を持つパッチ状の生息地に分布しており、これらのパッチ間では生物や物質の移動が生じる開放系として存在している。近年になり、開放系における野外実証研究や理論モデルが発展してきており、群集構造決定における生息地の環境の影響(環境プロセス)と空間構造の影響(空間プロセス)の相対的重要性もたびたび議論の的となっている。生物の生態的特性は群集構造決定における環境プロセスと空間プロセスの両方に影響を与えているために、環境プロセスと空間プロセスの相対的重要性を異なる生態的特性を持つ生物群間で比較する方法は、群集構造決定機構の一般則とその変異性(パターンやメカニズムの変化)を解明する上での有効なアプローチの一つとなるだろう。本稿では、生態的特性を考慮したマクロ生態学研究の一例として、三陸沿岸の岩礁潮間帯に生息する3つの生物群(海藻、固着性動物、移動性軟体類)を対象に、群集構造決定機構における環境要因と空間要因の相対的重要性を調べた研究について紹介する。群集構造決定機構における2つのプロセスの相対的重要性を明らかにするために、Variation Partitioningを用いて群集構造のばらつきの程度に対する環境の異質性と空間構造の説明力を調べた。解析の結果、全ての生物群で環境要因(海藻:25.9%、固着性動物:34.8%、移動性軟体類:14.2%)と空間構造(海藻:29.0%、固着性動物:5.9%、移動性軟体類:9.3%)の両方が群集構造のばらつきの程度を有意に説明していた。この結果は、例え同じハビタットに生息して共通の資源を利用し、相互作用する生物群であったとしても、生態的特性の違いに依存して群集構造決定機構が異なることを示唆している。

収録刊行物

  • 日本生態学会誌

    日本生態学会誌 60 (2), 227-239, 2010

    一般社団法人 日本生態学会

被引用文献 (3)*注記

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参考文献 (53)*注記

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