OIEリファレンス研究所及びコラボレイティング・センター

書誌事項

タイトル別名
  • OIE Reference Laboratory and Coraborating Center
  • OIE リファレンス ケンキュウジョ オヨビ コラボレイティング センター

この論文をさがす

抄録

国際獣疫事務局(World Organisation for Animal Health, OIE)は,1924年に国際協定により設立された動物衛生に関する国際機関である。(1)動物疾病の発生に関する情報収集と提供,(2)家畜防疫に関する国際協力の推進,科学的情報の普及,(3)動物・畜産物の国際取引に適用される基準の策定,(4)獣医サービスの改善,(5)動物由来食品に関する食品衛生の向上,(6)科学に基づく動物福祉の推進を目的として活動している。1995年以降は世界貿易機関(WTO)の衛生検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)に基づき動物衛生及び人獣共通感染症に関する国際基準の設定機関として位置づけられ,(3)の任務の重要性が増している。2007年5月現在172カ国が加盟している。わが国は1930年に加盟した。<BR>OIEの日常の活動は,パリの本部事務局及び世界5カ所の地域事務所によって運営されている。重要な決定は年1回開催される加盟国代表からなる国際委員会の総会による投票により行われる。事案により,行政委員会,専門委員会又は地域委員会が,国際委員会に対し提案を行う。これらの委員会の委員は,国際委員会の投票により3年任期で選出される。なお,4つの専門委員会の提案作成にあたっては,常設のワーキンググループ及び必要に応じて設けられる各種アドホック・グループがより専門的な見地から検討を行っている(図1)。<BR>OIEは非常に小さな国際機関である。パリの本部事務局の職員数は,約60人に過ぎない。そのため,加盟国から委託されたさまざまな業務をこなすために,外部の科学的知見の活用が不可欠である。このような観点から,前述の専門委員会などが設置されているほか,リファレンス研究所(Reference Laboratory)及びコラボレイティング・センター(Collaborating Centres)が指定され,OIEやその加盟国への技術的な助言を通じ,OIEの活動に貢献してている。特定の疾病に関し指定されている研究所はリファレンス研究所と呼ばれ,疾病横断的な特定の分野に関し指定されている研究所はコラボレイティング・センターと呼ばれている。リファレンス研究所及びコラボレイティング・センターがOIEや他の加盟国に対して負う義務の具体的な内容については,OIEマンデート及び内部規則(OIE Mandate and Internal Rules)に記載されている。<BR>リファレンス研究所は,ある特定の疾病(口蹄疫,BSEなど)についての診断方法やサーベイランスの方法の国際的な標準化にあたり中心的な役割を果たすことが求められる。その疾病の診断や防疫方法を開発するとともに,診断や防疫に使われる生物学的な参照品その他の試薬を他の加盟国に提供することが求められる。その疾病の疫学的データの収集,処理,提供を求められる。リファレンス研究所の指定の際には,その研究所の担当の専門家も登録され,登録された専門家は指定された疾病に関するあらゆる技術的,専門的な助言をOIEから求められる。また,リファレンス研究所は,他の加盟国からの依頼に応じ確定診断を行うことや,他の研究所や国際機関との協力の下,研究・調査の調整を求められることもある。<BR>一方,コラボレイティング・センターは,指定された特定の分野(疫学,リスク分析,動物用医薬品など)における技術の国際的な標準化,普及にあたり中心的な役割を果たすことが求められる。サーベイランスや家畜防疫に適用される国際ルールを調和させるため助言を求められたり,他の加盟国の職員を対象に研修の開催をしたり,OIEに代わって国際会議の開催を求められたりすることもある。また,他の研究所や国際機関との協力の下,研究・調査の調整を求められることもある。<BR>リファレンス研究所などの指定は,研究所が所在する加盟国からの申請に基づき,国際的に卓越した水準にある研究所であるかどうか,OIEのラボラトリー専門委員会の審査を受け,総会で承認を受けることにより,正式に行われる。<BR>2007年5月末現在,世界で計93疾病について計171の研究所がOIEリファレンス研究所に指定されている。これらのうち,延べ13の研究所が我が国に存在する(表1)。また,2007年5月末現在世界で,24の研究所がコラボレイティング・センターとして指定されている(表2)。<BR>リファレンス研究所及びコラボレイティング・センターとしての活動は,OIEの活動への人的・技術的な貢献であり,加盟国としての重要な責務でもある。

収録刊行物

参考文献 (3)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ