西アフリカ・カメルーン東部における熱帯半落葉樹林の生態と持続的利用の可能性

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タイトル別名
  • Ecology of the Tropical Semi-deciduous Forest and its Possibility of the Sustaining Use in East Cameroon, West Africa
  • 西アフリカ・カメルーン東部における熱帯半落葉樹林の生態と持続的利用
  • ニシ アフリカ カメルーン トウブ ニ オケル ネッタイ ハン ラクヨウ ジュ

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抄録

1. 熱帯多雨林のサバンナ化のメカニズムを解明しようとする研究の一環として, 筆者は熱帯半落葉樹林の生態環境を, 1989年9月と1990年10月に, 土壌学的および植物生態学的に調査した。調査は, 西アフリカ・カメルーン東部のベルトアの北北西約20-40Kmの地域 (標高約700-800m) でおこなった。<br>2. 半落葉樹林の土壌は, 薄いA層, 塊状構造, 軽埴土~埴土, 赤褐色のB層, 球状結核および鉄瘤塊などによって特徴付けられ, 土壌学的には鉄アルミナ質土壌に属する。地温測定の結果, 半落葉樹林内では地表面下約25cmまでは, 地上部の温度変化の影響を絶えず受けている。<br>3. 半落葉樹林内の8個の調査地に出現した植物種総数は87種を数え, そのうち63種が高木種そして24種が草本・低木種であった。階層構造は高木層が3層, 低木層および草本層が各1層の計5層からなり, 最高高木層の高さは35-50mであった。原生状態の半落葉樹林の階層構造は次のような特徴を示した: 最高高木層が常緑樹林にくらべ疎開している。高木第3層の植被率がきわめて高い。低木・草本層の発達が悪い。<br>4. 高木種63種のうち41種が後継稚樹および若木をもたなかった。41種の多くが, 最高高木層の構成種で, 陽樹および風散布種であることから, 更新においては伝統的焼畑跡地とか小伐開地というような大きなギャップが必要と考えた。<br>5. 半落葉樹林では, 更新が自然状態できわめて貧弱であった。このことから, この森林は, 将来現在の高木層の種類組成が維持できなくなり, 1代かぎりになると考えた。<br>6. 半落葉樹林の多くの構成種は常緑樹林域からサバンナ植生域の一部にまで分布が可能であることから, この森林は環境に対する生態的適応幅がきわめて大きい樹種の集合体であると考えた。<br>7. 半落葉樹林の種の多様性は, 伝統的焼畑や小規模伐採 (択伐等) によって形成される大きなギャップと多様な動物相によって維持されていると考えた。<br>8. 半落葉樹林を保護するために, 森林に一切の人間活動を排除した聖域を設けることは, 植物や動物の多様度の低下を生じさせることになる。<br>9. 現在の森林の破壊・消失は, 急激かつ異常な人口増加と都市化に附随して生じている。半落葉樹林の持続的利用を計るには, 高い人口圧のもとでも自然と共存できる農業システム及び林業システムの確立が急務である。そのためにも, 半落葉樹林の生態系を詳細に調査し, 森林の多様な潜在力を認識する必要があろう。

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