異旋類 Omalogyra atomus (ミジンワダチガイ類) のミトコンドリア DNA ゲノム構造とその系統学的意義

  • 倉林 敦
    筑波大学大学院生物科学研究科
  • 上島 励
    東京大学大学院理学系研究科・さきがけ研究21

書誌事項

タイトル別名
  • Partial Mitochondrial Genome Organization of the Heterostrophan Gastropod Omalogyra atomus and its Systematic Significance

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抄録

腹足綱異旋類に属するOmalogyra atomusのミトコンドリアDNAの全ゲノムをクローン化し, 4, 456bp(全長の約1/3)の塩基配列を決定した。塩基配列を決定した領域には, 10種類のtRNA遺伝子(tRNA^<Arg>, tRNA^<Asn>, tRNA^<Glu>, tRNA^<Gln>, tRNA^<His>, tRNA^<Ile>, tRNA^<Leu(UUR)>, tRNA^<Thr>, tRNA^<Trp>, and tRNA^<Phe>)と6種類の蛋白質遺伝子(ATPase6, ATPase8, COII, COIII, ND2 and ND4)と1種類のrRNA遺伝子(srRNA)を同定した。ゲノム上の遺伝子配置を他の腹足類と比較したところ, Omalogyra atomusの遺伝子配置は, 前鰓類(新生腹足類)のLittorina saxatilisとは大きく異なっているが, 有肺類や後鰓類に非常に類似していることが分かった。外群比較により, Omalogyra atomusと有肺類, 後鰓類に共通の特殊な遺伝子配置は異鰓類の共有派生形質であると考えられる。このデータは, ミジンワダチガイ科が異鰓類の一員であるという近年の解剖学的知見を支持する。また, Omalogyra atomusのtRNA遺伝子には異常な二次構造を示すものが認められ, RNA^<Glu>やRNA^<Lue(UUR)>では転写後のRNA editingを受けていることが示唆された。このような特徴は, 有肺類や後鰓類でも知られているので, Omalogyra atomusと直神経類との近縁性を支持する証拠の一つと考えられる。

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