下顎運動時頭頸部協調の筋電図学的評価

  • 敦井 智賀子
    新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食・嚥下リハビリテーション学分野
  • 荒井 良明
    新潟大学医歯学総合病院顎関節治療部
  • 谷口 裕重
    新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食・嚥下リハビリテーション学分野
  • 矢作 理花
    新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食・嚥下リハビリテーション学分野
  • 堀 一浩
    新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食・嚥下リハビリテーション学分野
  • 井上 誠
    新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食・嚥下リハビリテーション学分野

書誌事項

タイトル別名
  • The electromyographic evaluation of head and neck coordinated movements during jaw movements

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抄録

下顎タッピング運動や咀嚼時の頭部と下顎の協調運動は中枢性に制御されているという報告があるが,これらの運動に後頸筋群がどのように関与しているかについては明らかにされていない.本研究では,頸筋が顎機能にいかに関わるかを検索することを目的とし,下顎運動と顎筋および頭頸部筋の筋電図の同時記録を行った.<BR>  被験者は全身と顎口腔系に臨床的な異常を認めない健常成人11人(男性,平均年齢29.3歳)とした.記録内容は右側咬筋及び舌骨上筋群,両側胸鎖乳突筋及び後頸筋群の表面筋電図,ならびに頭部及び下顎運動の3次元運動とした.被験者には,頭部無拘束下,90度座位にて椅子に定位させた後,1)咬頭嵌合位ならびに後方歯牙接触位時の記録,2)75/60 Hzの速度での下顎タッピング運動を12秒間,十分に軟化したガム(8.7g)の右咀嚼を12秒間行った際の記録を行った. <BR>  結果として,1)下顎を咬頭嵌合位から後方歯牙接触位に後退させることにより舌骨上筋群の活動とともに胸鎖乳突筋および後頸筋群の筋活動が増加した.2)下顎タッピング時の顎開口量と頭部前後屈量は,いずも咀嚼時のものに比べて有意に大きかった.個体内での運動の安定性を調べた変動係数は,規定された運動であるタッピング時のほうがいずれの値においても小さい傾向があった.3)胸鎖乳突筋および後頸筋群はいずれのリズム下顎運動時にも開口相に明らかな活動を認めた.4)胸鎖乳突筋には,閉口相にもピークが観察された.ことに咀嚼側の活動は,タッピング時と咀嚼時で有意差が認められた. <BR>  結論:胸鎖乳突筋,後頸筋群はともに顎位の決定や頭頸部協調活動に深く関与するが,その協調様式は互いに異なる可能性をもつ.また,咀嚼時の閉口時における胸鎖乳突筋活動は食物粉砕に関わる咬筋活動の上昇に伴い発現するものであると示唆された.

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被引用文献 (2)*注記

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参考文献 (43)*注記

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