SFBによる免疫細胞を介した腸管バリア形成機構の解明

  • 後藤 義幸
    千葉大学真菌医学研究センター感染免疫分野微生物・免疫制御プロジェクト 東京大学医科学研究所国際粘膜ワクチン開発研究センター粘膜共生学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Mechanism of Intestinal Homeostasis Regulated by Segmented Filamentous Bacteria and Immune Cells
  • 平成27年度日本ビフィズス菌センター研究奨励賞受賞 SFBによる免疫細胞を介した腸管バリア形成機構の解明
  • ヘイセイ 27ネンド ニホン ビフィズスキン センター ケンキュウ ショウレイショウ ジュショウ SFB ニ ヨル メンエキ サイボウ オ カイシタ チョウカン バリア ケイセイ キコウ ノ カイメイ

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抄録

腸管は腸内細菌を含む無数の抗原に日常的に曝されている特殊な組織であり,宿主は腸内細菌と共生関係を維持しつつ病原性微生物を排除するために精緻な腸管免疫システムを備えている.腸内細菌の一種であるセグメント細菌(segmented filamentous bacteria:SFB)は,Citrobacter rodentiumなどの病原性細菌の感染に対する防御機能を司る腸管ヘルパーT17細胞(Th17)の誘導に必須であることが報告されている.本研究では,SFBによって誘導されるTh17細胞の誘導機構の解析を行った.その結果,Th17細胞の誘導には樹状細胞によるMHCIIを介した抗原提示が必要である一方,3型自然リンパ球(group 3 innate lymphoid cells:ILC3)上に発現しているMHCIIはTh17細胞の分化・増殖を負に制御することが明らかとなった.また,SFBは腸管上皮細胞における糖鎖(α1,2-フコース)の発現を誘導することも見出した.さらに,腸管上皮細胞のα1,2-フコースの誘導には,腸内細菌依存的にILC3から産生されるIL-22が必要であることも明らかとした.上皮細胞が発現するα1,2-フコースは,病原性細菌であるSalmonella typhimuriumの感染に対し防御的役割を果たす.以上の結果から,げっ歯類の腸管において腸内細菌の一種であるSFBは,Th17細胞の恒常性維持に寄与するのみならず,ILC3を介して上皮細胞のα1,2-フコースを誘導することで,病原性細菌に対する感染防御基盤を形成していることが明らかとなった.<br>

収録刊行物

  • 腸内細菌学雑誌

    腸内細菌学雑誌 30 (4), 159-163, 2016

    公益財団法人 腸内細菌学会

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