非水溶媒環境下における特異なイオン会合現象とその解明

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タイトル別名
  • Elucidation of specific ion association in non-aqueous solution environments
  • ヒスイヨウバイ カンキョウ カ ニ オケル トクイ ナ イオン カイゴウ ゲンショウ ト ソノ カイメイ

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抄録

水溶液中における比較的低濃度のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は,「無関係塩」又は支持電解質として取り扱うことができ,その溶液中のイオン種の平均活量係数は簡単に評価できる.低誘電率媒体中(εr<10)では,1 : 1型電解質から高次のイオン会合が起こることは広く受け入れられているが,高誘電率媒体中では高次イオン会合は起こらないものとして取り扱われてきた.しかし,溶質に対する溶媒和力が弱い非水溶媒中(20<εr<65)では,陽イオンと陰イオン間に,クーロン力だけではなく錯形成力などの化学的相互作用が働き,イオン対に加えて高次のイオン会合体が生成できることを明らかにした.アセトニトリルやベンゾニトリルなど水素結合供与性及び受容性に乏しい疎プロトン性溶媒中では,酸(HA)とその共役塩基イオン(A)間の水素結合力によるホモ共役種,A(HA)nが生成しやすい.非水溶液中で,ある化学種に対して,Liなどの金属イオン又はClなどの陰イオンが直接反応することを確認し,化学平衡に及ぼす「塩効果」を単なる“medium effect”としてではなく,化学的相互作用に基づいて統一的に解釈した.水のバルク水としての特性は,水素結合による水分子の大集団化によって初めてもたらされるものであるとし,大集団化が実現できない条件下では,水の特性は「二水素エーテル」に「還元」され,このような「水溶液」中では,基本的には,上に述べた非水溶液中と同様の反応が起こり得ると論じた.化学平衡的には,観測できないほど微小な反応中間体濃度の増加が,観測可能な大きな反応速度の変化として測定され,水の構造性が低下した水溶液中でのイオン間の化学的相互作用が実証された.<br>

収録刊行物

  • 分析化学

    分析化学 53 (11), 1279-1293, 2004

    公益社団法人 日本分析化学会

被引用文献 (3)*注記

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参考文献 (122)*注記

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