低濃度大気汚染の植物指標についての化学生態学的研究

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タイトル別名
  • Chemo-ecological Studies on Plant Indicators for Low Level Air Pollution
  • テイ ノウド タイキ オセン ノ ショクブツ シヒョウ ニ ツイテ ノ カガク
  • Special Articles on Global and Regional Environment and Chemistry. Chemo-ecological Studies on Plant Indicators for Low Level Air Pollution.

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抄録

農村地帯に新設された火力発電所の周辺地域で,16年間にわたる可視被害の記録や年輪幅の推移に基づいて,スギの生育におよぼす低濃度大気汚染の影響を検討した。火力発電所から約7km以内の平野部では樹勢の衰退がいちじるしかったが,1975年に排煙脱硫が始められたため,被害のいちじるしい拡大はまぬがれた。樹齢や気象条件を=補正した年輪解析の結果,大気中の二酸化硫黄および二酸化窒素の年平均値によって,年輪幅の変動の約70%を説明し得ることが示された。硫黄酸化物による大気汚染の指標としてスギ葉中の水溶性硫黄含有量を測定した際にi汚染地域では葉中のタンニン含有量が低下していることを見いだした。この原因について検討したところ,大気汚染物質によるシキミ酸経路後半の阻害が推定された。タンニンの含有量が低下すると,昆虫による食害や木材腐朽菌の繁殖が増大し,樹木の抵抗性が弱まる可能性がある。低濃度大気汚染によって樹木の生体防御機構が損なわれ,二次的に外部環境の影響を受けやすくなるものと考えられた。

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