特発性上腸間膜動脈解離の1症例

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タイトル別名
  • A case of idiopathic superior mesenteric artery dissection with abdominal pain

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説明

患者は59歳の男性。既往はとくに指摘されていなかった。食事中に耐えがたい上腹部痛が出現し保健管理センターを受診した。スコポラミン20mgを筋肉注射されたが腹痛の改善なく,近医へ転院となった。腹部造影CT検査上,上腸間膜動脈解離と診断され,精査加療目的に当科救急搬送となった。搬入時,収縮期血圧194mmHgと高血圧を認めたが他のバイタルサインは安定しており,患者は持続する上腹部痛を訴えていた。当科で施行した腹部造影CT検査所見では,上腸間膜動脈の解離と壁在血栓を認めた。しかし,腸管への血流は保たれていたので,抗血小板薬(シロスタゾール200mg/day)と降圧薬(シルニジピン5mg/day)の内服を開始し,保存的に経過観察した。第3病日のCT検査所見では解離の明らかな悪化を認めず,飲水を開始し,第4病日より食事摂取を開始したが,腹痛の再燃は認めなかった。第6病日のCT検査でも所見に著変なく,第11病日に自宅退院し,当院の循環器内科外来で経過観察となった。発症2か月後のCT検査では前回より更に偽腔の血栓化が進行したが,真腔が狭小化していた。発症6か月後のCT検査では偽腔は完全閉塞し,真腔狭窄も改善していた。以降,本症例では上腸間膜動脈解離の再発を認めなかった。特発性上腸間膜動脈解離は稀な疾患であるが,急性腹症の鑑別診断の一つとして念頭に置く必要がある。

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参考文献 (22)*注記

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