小児鈍的腹部大動脈損傷の1例

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  • Blunt abdominal aortic injury in a child: a case report

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抄録

鈍的腹部大動脈損傷は稀な外傷であり,小児発生例は本邦における過去報告例はない。症例は12歳男子で,湖上で水上バイクにぶら下がっていたところ,他の水上バイクが患者の腰部に衝突し,水上バイク間で挟まれて腹部を強打した。近医に搬送後,腹部単純CTにて後腹膜出血を認め,大血管損傷疑いにてヘリコプターで当センター搬送となった。来院時出血性ショック状態で急速輸液・輸血を開始した。造影CTで腹部大動脈損傷と診断した。腹部大動脈造影で,腹部大動脈本幹末端より仮性動脈瘤形成と造影剤の漏出がみられ,選択的動脈塞栓術での止血は困難であった。腹部大動脈に大動脈閉塞バルーンカテーテル(intra-aortic balloon occluder; IABO)を挿入し,バルーンを拡張した後,緊急開腹手術を施行した。腹部大動脈末端後壁に2cm程の縦走する全層性損傷を認め,損傷部を縫合修復し手術を終了した。術後経過良好であり,第16病日自宅退院となった。小児においては,動脈の細さのために挿入に困難を伴うものの,後腹膜開放に先行したIABOによる腹部大動脈遮断は,出血の制御に有用であると思われた。

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参考文献 (65)*注記

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