肺サーファクタントタンパク質Dによる上皮増殖因子シグナルの制御機構

  • Hasegawa Yoshihiro
    Department of Biochemistry, Sapporo Medical University School of Medicine Department of Respiratory Medicine and Allergology, Sapporo Medical University School of Medicine

書誌事項

タイトル別名
  • The Mechanisms of Epidermal Growth Factor Signaling Suppression by Pulmonary Surfactant Protein D
  • GLYCODEBUT : The Mechanisms of Epidermal Growth Factor Signaling Suppression by Pulmonary Surfactant Protein D

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抄録

肺サーファクタントタンパク質D(SP-D)はC型レクチンのコレクチン・サブグループに属し、自然免疫において重要な役割を担っている。本研究ではSP-Dが上皮増殖因子(EGF)シグナルを制御することで肺がん細胞の進展を抑制する可能性について着目した。SP-Dはヒト肺腺がん細胞株(A549細胞、H441細胞)において、EGFによる上皮増殖因子受容体(EGFR)、Erk、Aktのリン酸化を抑制した。またSP-DはA549細胞の増殖・遊走・浸潤を抑制した。リガンド結合の解析では、SP-DはA549細胞のEGFRとEGFとの結合を阻害した。リガンドブロッティングでは、SP-DはA549細胞由来のEGFRに直接結合した。また表面プラズモン共鳴センサーを用いて、SP-DとリコンビナントヒトEGFRの細胞外ドメイン(soluble EGFR; sEGFR)との相互作用を検討したところ、SP-Dはカルシウム依存性にsEGFRと結合した。その結合はEDTAやマンノースによって阻害され、N型糖鎖を切断したsEGFRにはSP-Dは結合しなかった。sEGFRのN型糖鎖を質量分析で解析したところ、ドメインIIIに高マンノース型のN型糖鎖が存在した。以上より、SP-Dは糖鎖認識領域を介してEGFRの高マンノース型糖鎖に結合し、EGFRへのリガンド結合を阻害することで、EGFシグナルを抑制すると考えられた。

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