重症心身障害児(者)におけるDVTの特性からみた臨床的検討

  • 大森 啓充
    独立行政法人国立病院機構柳井医療センター小児科
  • 金岡 保
    加東市民病院外科
  • 山崎 雅美
    独立行政法人国立病院機構柳井医療センター神経内科
  • 武居 浩子
    独立行政法人国立病院機構柳井医療センター検査科
  • 住元 了
    独立行政法人国立病院機構柳井医療センター外科

書誌事項

タイトル別名
  • Prevalence and Charcteristic Features of Deep Vein Thrombosis in Patients with Severe Motor and Intellectual Disabilities

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抄録

<p>静脈血栓塞栓症(VTE)は重症心身障害児(者)(以下,重症児)の突然死の原因の一つと考えられるが,重症児におけるVTEの実態は明らかでない.われわれは16例の重症児において,下肢深部静脈血栓症(DVT)の検出頻度と部位,下肢筋内静脈の発達状態について下肢静脈超音波検査(US)を用いて検討した.その結果,下腿ひらめ筋静脈の最大径の平均値は1.6±0.5 mmであり,DVTが7例(43.8%)に認められた.血栓の存在部位はほとんどが総大腿静脈,大腿静脈であり,ひらめ筋静脈に血栓は存在しなかった.DVT形成を認めた重症児では有意にひらめ筋が薄かった.今回の結果から,寝たきり重症児ではDVT検出率が高いが,その発生部位は,一般的に長期臥床においてDVTの初発部位となりやすいひらめ筋静脈でなく,膝窩静脈より中枢側の静脈であることがわかった.文献値では,歩行獲得後の成人のひらめ筋静脈径平均値は6.7±1.8 mmであり,重症児ではより小さかった.重症児の下腿筋内静脈は一般成人と比し発達状態が悪く,DVTの発現様式の違いに関連している可能性がある.現在確立されたVTE診療ガイドラインは歩行獲得後の成人が対象であり,幼少期からの脳性麻痺などで移動能力が悪い寝たきり重症児には対応していない.今回の結果をふまえ,重症児特有の病態に即した新たな重症児対象のVTE診療ガイドラインの作成が必要と考えられる.</p>

収録刊行物

  • 静脈学

    静脈学 28 (1), 29-34, 2017-03-16

    日本静脈学会

参考文献 (4)*注記

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