棚田の米生産における労働時間・生産費・所得の実態調査

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タイトル別名
  • Survey of working hours, production costs, and income associated with rice production in rice terraces
  • タナダ ノ コメ セイサン ニ オケル ロウドウ ジカン セイサンヒ ショトク ノ ジッタイ チョウサ

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抄録

棚田において持続的に米生産を行うための営農方法を検討する基礎資料を得ることを目的として、福岡県星野村の2名の農家(農家A、農家B)を対象として、米生産における労働時間・生産費・所得の実態調査を行った。その結果、10a当たりの労働時間は農家Aが全国平均の3.2倍、農家Bが2.1倍であった。また、10a当たりの支払利子・地代算入生産費は農家Aが1.7倍、農家B が1.5倍であり、労働費の割合が大きいのが特徴であった。調査農家は米の販売価格を高く設定していたため、10a当たりの所得は農家A が全国平均の2.2倍、農家Bが3.8倍と顕著に高かったが、1日当たりの所得は10a当たりの労働時間が長いため、農家Aは全国平均を下回り、農家B は全国平均の1.7倍に止まった。調査農家が持続的に米生産を行うために必要な玄米の販売価格(再生産可能価格)は、農家A が557円/kg、農家B が380円/kgと算出された。実際の販売価格は農家Aが333円/kg、農家Bが425円/kgであり、農家B は再生産可能価格以上の販売価格を実現しており、高所得を上げていた。本結果は、棚田で持続的な米生産を行うためには生産費の削減と同時に販売米価の適切な設定を行うことが必要であり、労働時間の短縮と高付加価値化による農家レベルでの販売力強化の重要性を示唆するものであった。

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