中国森林地域における窒素沈着量と窒素溶脱量の実測

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タイトル別名
  • Measurement of Atmospheric Nitrogen Deposition and Nitrogen Leaching Rates in Several Forests in China
  • チュウゴク シンリン チイキ ニ オケル チッソ チンチャクリョウ ト チッソ ヨウ ダツリョウ ノ ジッソク

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抄録

イオン交換樹脂(アンバーライトMB-1,オルガノ)を詰めた樹脂カラムを,中国のハイラル,長春,長白山,北京(東霊山),広州(黒石頂と鼎湖山)の6地点の,広葉樹林・針葉樹林,および樹林外に設置し,大気からの窒素沈着量を測定した。測定された年間窒素沈着量(硝酸態とアンモニア態窒素の合計)は,林外雨で2.5~20.7 kgN/ha/年,林内雨で1.4~39.2 kgN/ha/年であり,北部で少なく南部で多い傾向を示した。また,窒素沈着量と人口密度には有意な相関がみられた。窒素沈着量が大きい地域では,樹林内の窒素沈着量が樹林外の沈着量を上回っており,大気汚染の深刻な地域では,葉面への乾性沈着の寄与が大きいことが示唆された。また,窒素沈着量の大きい地域では,アンモニア態窒素が卓越していた。現在の中国では,肥料や畜産排泄物に由来する窒素が,自動車・工場等からのNOxに由来する窒素よりも,相対的な寄与が大きいのであろう。土壌中に埋設した樹脂バッグにより測定した窒素溶脱量は,窒素沈着量が大きい地点ほど大きかったが,窒素溶脱量が窒素沈着量を上回っている場合が多かった。広州・鼎湖山における樹脂バッグによる測定値(40~50 kgN/ha/9ヶ月)は,小集水域における水収支に基づく窒素流出量(40.4 kgN/ha/年)ともよく一致していた。窒素溶脱量の大きかった広州・鼎湖山の小河川では,年間を通して硝酸イオン濃度が高く(2.6~8.5 mgN/L),降水に伴う流出高の増大時にその濃度が急激に増大した。人間活動の増大に伴う窒素沈着量の増加は,中国の森林地域からの窒素流出の増加を引き起こしている可能性が示唆された。

収録刊行物

  • 環境科学会誌

    環境科学会誌 23 (4), 268-276, 2010

    社団法人 環境科学会

参考文献 (6)*注記

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