ニホンジカ(<I>Cervus nippon</I>)の分布拡大に影響を与える要因

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タイトル別名
  • Factors influencing expansion of distribution on sika deer (<I>Cervus nippon</I>)
  • ニホンジカ(Cervus nippon)の分布拡大に影響を与える要因
  • ニホンジカ Cervus nippon ノ ブンプ カクダイ ニ エイキョウ オ アタエル ヨウイン

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抄録

近年,全国でニホンジカの分布拡大が確認され,それに伴い農林業被害地域も拡大し,大きな社会問題となっている。本研究では,分布拡大に影響する要因を把握することで,被害拡大防止の一助になると考えた。さらに,分布拡大の要因が個体群を安定的に維持できる生息地からの距離に影響されることを仮定し,異なる解析対象範囲を用いて解析することで分布拡大の要因把握を試みた。<br>分布データは環境省の自然環境保全基礎調査の第2回(1978年)と第6 回(2003年)を用い,両時期に分布していたメッシュを安定メッシュ,第6回のみに分布していたメッシュを拡大メッシュと定義し,解析は拡大メッシュを対象に行った。説明変数には,標高,積雪,植生,土地利用,人口,道路に関する変数を用いた。解析では誤差分布を二項分布,リンク関数をロジットとした一般化線形モデルを用いた。解析対象範囲は本州,四国,九州とし,全域を対象にした解析では安定メッシュからの距離を説明変数に含むモデルと含まないモデルの二つのモデルを作成した。また,分布拡大距離の統計量をもとに60km,20km,10km に解析対象範囲を絞ったモデルを作成した。<br>その結果,全域モデルで説明変数に距離を含まないモデルでは,積雪や人口などの広域で変動する要因の影響が考えられ,既存の研究では指摘されてこなかった人為的要因の影響が示唆された。また,説明変数に距離を含むモデルの結果では,安定メッシュからの距離の影響が強いことがわかった。解析対象範囲を絞ったモデルでは,耕作放棄地,針葉樹林,道路などの比較的小スケールで変化する要因が影響を及ぼしていることがわかった。しかし,範囲を絞ったモデルの精度はあまり高くなく,その原因としてニホンジカの密度などの内部要因の影響が考えられた。

収録刊行物

  • 環境科学会誌

    環境科学会誌 22 (6), 379-390, 2009

    社団法人 環境科学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (49)*注記

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