農薬使用に関する環境指標間の関連性分析

  • 佐藤 正衛
    独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 九州大学大学院生物資源環境科学府
  • 南石 晃明
    九州大学大学院農学研究院
  • 亀屋 隆志
    横浜国立大学大学院環境情報研究院

書誌事項

タイトル別名
  • Comparative Analysis of Pesticide Environmental Indicators for Agricultural Technology
  • ノウヤク シヨウ ニ カンスル カンキョウ シヒョウ カン ノ カンレンセイ ブンセキ

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抄録

第三次環境基本計画における重点課題として化学物質による環境リスクの低減があげられている。また農業政策では肥料・農薬の使用による環境負荷軽減の観点から環境保全型農業が推進されている。そして農業生産者の農薬適正使用の遵守や特別栽培農産物の表示制度の取組が進められている。こうした取組では,農薬削減の基準となる指標は主に農薬有効成分使用回数を想定している。この指標は,農業生産場面での利用は簡易であるものの環境負荷削減の効果の有無に関する知見は必ずしも十分ではない。<BR>そこで本稿では,農薬使用の環境リスクを低減するための管理指標として筆者らが提案している農薬使用の技術危険度(RST)を,農業技術体系データベースの野菜技術体系55種類のデータへ適用し,有効成分使用回数やその他の簡易指標との相関分析と,品目別,作型別,農薬用途別に指標間の関連性を検討した。その結果,RSTとその他の簡易指標間の相関は小さく,簡易指標を環境管理の目標にするだけでは技術体系全体からみた環境負荷の効果的な削減には必ずしも結びつかないことを明らかにした。また簡易指標の利用では環境負荷を削減できない場合には,原因となる有効成分を特定して対策を検討する必要があること,その際の管理指標としてRSTが有効であることを明らかにした。<BR>さらにRSTの利用場面を検討し,1)年度ごとに栽培品目が異なる場合や複数部門の経営であっても自己の経営の過年度の計画・実績と比較して環境配慮の観点から当該年度の計画・経営改善効果が評価可能となること,2)低環境負荷を目指した農業技術の研究開発に有効であること,3)農業経営のリスクマネジメント適正農業規範(GAP)において農薬散布計画の立案プロセスを導入し,農場管理規則の中でRSTを環境管理の目標指標として利用可能であること,4)農薬商品ラベルにより環境情報の発信に利用できることを示した。

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