数理モデルによる農作物と畜産物中の化学物質の地域特異的な濃度推定手法の検証

  • 吉田 喜久雄
    独立行政法人産業技術総合研究所,安全科学研究部門
  • 手口 直美
    独立行政法人産業技術総合研究所,安全科学研究部門

書誌事項

タイトル別名
  • Validation of Mathematical Modeling Approach to Estimate Site-specific Concentrations of Chemicals in Agricultural and Livestock Products
  • スウリ モデル ニ ヨル ノウサクブツ ト チクサンブツ チュウ ノ カガク ブッシツ ノ チイキ トクイテキ ナ ノウド スイテイ シュホウ ノ ケンショウ

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抄録

現在,わが国でも様々な化学物質のリスク評価が実施されている。しかし,評価された物質数は限られている。このため,数万に及ぶとされる化学物質のリスク評価を加速する必要があるが,モニタリングデータに基づく現行の評価方法は,利用可能な情報がない多数の化学物質,特に食品経由の経口暴露が主体の疎水性で低揮発性の物質には適用できない。そこで,数理モデルを用いて,農作物及び畜産物中の化学物質濃度を地域特異的に推定する手法を検討した。先ず,全国の5km×5kmメッシュ別大気中濃度の空間分布から,植物モデルと独自に導出した濃度補正係数を用いて,メッシュ内の個別農作物中の化学物質濃度を推定し,さらに,地理情報システムを用いて,メッシュ内の農用地利用率から市町村別に個別農作物中推定した。さらに,同様の手法により,メッシュ内の飼料作物中の化学物質濃度を推定するとともに,市町村別の飼料作物収穫量と肉用牛及び乳用牛の飼養頭数を基にメッシュ別の給与粗飼料量を推定し,これらから個別畜産物中濃度を推定した。推定された3種の農作物と3種の畜産物中濃度を生産地が明らかな農作物と畜産物中濃度測定値と比較した結果,ほぼ1/6から8倍の精度で推定が可能であることがわかった。これらの検証結果から,限られた情報から化学物質の農作物及び畜産物中濃度を地域特異的に数理モデルにより推定することは可能と考えられた。今後は,個別の農作物と畜産物の生産地から消費地への流通データと組み合わせることにより,消費地ごとの一般住民の農作物及び畜産物経由の摂取量推定が可能となると考えられる。

収録刊行物

  • 環境科学会誌

    環境科学会誌 22 (5), 317-328, 2009

    社団法人 環境科学会

参考文献 (26)*注記

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