書誌事項
- タイトル別名
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- Soil Water Movement of a Mangrove Forest in Balmahera Island, East Indonesia
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説明
マングローブ林は沿岸域に成立する森林である。マングローブ林の土は,多かれ少なかれ海水の影響をうけるから,高い塩分濃度をとることがある。水が停滞すると極端な低酸素状態に陥り,嫌気条件下で海水起源の硫化物が集積される。嫌気的条件が好気的条件に変化すると,集積していた硫化物が酸化されてつよい酸性をしめすことがある。潮汐変化に対する土壌中で水の移動,土壌水位と土壌の酸化還元状態およびpH の関係について調べた。<BR> 調査地は,東インドネシア,ハルマヘラ島カオのソソボック川河口部にあるよく発達したマングローブ林である。植生帯は樹則より順に,河口部のSonneratia alba 優占林(S ゾーン) ,海岸線を形成する幅の狭い砂丘上のHibiscus tiliaceus 優占林(H ゾーン) ,砂正後部の泥地上のRhizophora apiculata , Bruguiera gymnorrhiza 混交林(Ra-B ゾーン)およびRhizophora stylosa,Nypa fruticans , Xylocarpus granatum が優占する林分(Rs-N ゾーン)に区分できた。<BR> 冠水の頻度と継続時間は,潮位と地盤高との関係で定まっていた。小潮満潮で冠水するS ゾーンは,冠水頻度が高く1 回の冠水時聞が長かった。大潮満潮で冠水するRa-B ゾーンおよびRs-Nゾーンでは,冠水頻度が低く冠水時間も短かった。また小潮前後には数日間にわたって非冠水時聞が継続した。H ゾーンは大潮満潮よりも高いため冠水しなかった。地表が冠水すると土壌水位は地表面まで上昇した。H ゾーンと川岸のごく近くをのぞけば,冠水しないとき土壌水位は低下する一方であったが,低下速度が遅いため,冠水日には土壌水位は地表面近くに保たれていた。Ra-B ゾーンとRs-N ゾーンでは,小潮の前後には非冠水時間が数日におよび,冠水日よりも土壌水位の低下幅が大きくなった。しかし, Rs-N ゾーンの土壌水位が地表から70 cm の深さまで低下するのに対して, Ra-B ゾーンのそれは30 cm にとどまった。そのため土壌中の水の移動性は, Ra-B ゾーンで小さくRs-N ゾーンで大きいと考えることができた。<BR> 土壌水位の低下幅の小さいS ゾーンとRa-B ゾーンの土壌水は,深さ20 cmから強い還元状態をしめした。それに対して土壌水位の低下幅が大きいRs-N ゾーンの土壌水は深さ70 cm でも,弱い還元状態をしめすのみであった。S ゾーンとRa-B ゾーンの土は,表層のものから風乾によるpH の低下が顕著で強い酸性を呈しするようになる。Rs-N ゾーンの土で風乾により強酸性となるのは下層のものに限られた。冠水頻度および非冠水時間の長さは土壌の塩分濃度に影響するものとされてきたが,酸化還元状態とpH にも影響をおよぼしており,土壌中での水の移動性の違いにより,そのあらわれかたが変化することが明らかになった。また潮位の季節的変化が大きい場合は,冠水頻度が季節により変化し,酸化還元状態およびpH も周期的に変化すると考察した。
収録刊行物
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- Tropics
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Tropics 4 (2+3), 187-200, 1995
日本熱帯生態学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001204422393856
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- NII論文ID
- 130004541987
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- ISSN
- 18825729
- 0917415X
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- Crossref
- CiNii Articles
- OpenAIRE
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可