多様な作物分布を考慮した全球農業水需要量推定

書誌事項

タイトル別名
  • An Estimation of Global Agricultural Water Demand Including Spatial Distribution of Crop Species
  • シンポジウム論文 多様な作物分布を考慮した全球農業水需要量推定
  • シンポジウム ロンブン タヨウ ナ サクモツ ブンプ オ コウリョ シタ ゼン キュウ ノウギョウスイ ジュヨウリョウ スイテイ

この論文をさがす

抄録

近年,人類の経済発展や人口増加に伴い世界の農業水需要量が急激に増加している。農業水資源計画を策定する上で農業水需要量を知る必要があるが,全球規模での水需要量統計からは,国総量のデータが年単位で得られるのみである。本研究では,i)気象要素を入力条件に,水収支・放射収支・エネルギー収支計算から物理的に解析する事, ii)高い空間・時間解像度で水需要量データを得る事 ,iii)作物による水需要形態の違いを反映する事,を目的に多様な作物分布を考慮した全球農業水需要量の推定を行う。水文陸面過程モデルにより全球灌漑要求水量の推定を行うため,解析に必要となる全球の灌漑パラメータを作成した。作物別の灌漑面積情報は,全球灌漑マップと各国の作物面積統計値とを組み合わせる事により整備し,農事暦をリモートセンシングデータNDVI のフェノロジー解析により作成した。地表植生の活性度を示す植生指標NDVI の時系列情報からは,作物生育の状態を現実的に捉える事が可能である。全球での灌漑要求水量を推定した結果,解析された結果が各国の統計データ及び既往研究の推定値と比較して妥当な値であるとことが示された。地域別にみると,アジア域での米,小麦農地や北アメリカ域の小麦,トウモロコシ農地,ヨーロッパ域の小麦農地で多量の水が消費されている事が分かった。全球耕作地の取水量依存比率(耕作地の年蒸発散量に対する水需要量の比)の比較からは,降水量,土壌物理,作物種が取水量依存度の支配要素である事が分かった。各作物の取水量依存比率を比較した結果,同じ降水量条件下では,米が最も取水量依存比率が高く,綿花が最も低い事が示された。本研究で提案する水需要量推定手法は,農地の土壌物理や気象,作物の違いを反映可能なものであり,流域スケールでの農業水資源計画において有用な情報を提供しうると言える。

収録刊行物

  • 環境科学会誌

    環境科学会誌 26 (2), 158-166, 2013

    社団法人 環境科学会

参考文献 (25)*注記

もっと見る

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ