痛みの感情側面と痛覚認知

  • 荻野 祐一
    群馬大学麻酔神経科学
  • 根本 英徳
    群馬大学麻酔神経科学
  • 斉藤 繁
    群馬大学麻酔神経科学
  • 後藤 文夫
    群馬大学麻酔神経科学
  • 乾 幸二
    自然科学研究機構生理学研究所統合生理研究系感覚運動調節研究部門
  • 柿木 隆介
    自然科学研究機構生理学研究所統合生理研究系感覚運動調節研究部門 総合研究大学院大学生命科学研究科生理科学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • Emotional component of pain and pain perception in humans
  • イタミ ノ カンジョウ ソクメン ト ツウカク ニンチ

この論文をさがす

説明

痛みは不快な感覚であるが,同時に主観的な感情である.新しいニューロイメージングにより,痛みの感情と,それが痛覚認知に与える影響が科学的に明らかになってきた.本稿では,それらについて最近の私たちの研究成果を中心に紹介する.近年,侵害刺激に反応して活動する大脳皮質領域,いわゆる痛み関連脳領域が明らかとなったが,実際に痛み刺激が与えられなくても,痛みをイメージした時には類似の脳部位が活動するという仮説を実証するため,私たちは痛そうな写真(注射をされている写真など)を被験者に見せて,機能的MRI(fMRI)で脳活動を計測した.その結果,第二次体性感覚野,島,帯状回といった痛覚認知に関与する脳領域の血流が有意に上昇する事を発見した.また,瞑想中には痛みをまったく感じないというヨガの達人では,瞑想中に痛覚刺激を与えたときの脳磁図とfMRIの計測では,痛み関連脳領域の活動が著しく減弱していた.このように,痛みの感情により生じる脳活動は,痛み関連脳領域の主要活動を占めており,暗示や瞑想などにより,侵害刺激による痛み関連脳領域の活性化と抑制が起こり,痛覚認知が強く影響されていることが明らかとなった.

収録刊行物

参考文献 (18)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ