離島における医薬品流通システムと医薬品卸の役割

  • 中村 努
    東京大学大学院総合文化研究科学術研究員

書誌事項

タイトル別名
  • Pharmaceutical Distribution Systems in Isolated Islands and the Role of Pharmaceutical Wholesalers
  • 離島における医薬品流通システムと医薬品卸の役割--長崎県五島列島の事例
  • リトウ ニ オケル イヤクヒン リュウツウ システム ト イヤクヒンオロシ ノ ヤクワリ ナガサキケン ゴトウ レットウ ノ ジレイ
  • A Case Study of Goto Islands, Nagasaki Prefecture
  • —— 長崎県五島列島の事例 ——

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抄録

本稿では,長崎県五島列島を事例に,離島における医薬品流通システムを医薬品卸の機能に注目して検証した。医薬品は生命関連性が高いため,地域に偏りなく医薬品を供給するという公平性が求められる。一方,離島はその隔絶性や狭小性ゆえに,配送コストが本土と比較して高くなる。また,需要の絶対量が小さく,スケールメリットを生かした配送効率化には限界がある。しかし,公定薬価は全国一律に決定されるため,離島の薬価に占める配送コストの割合は高い。<br>こうした離島が抱える配送上の構造的問題に対して,医薬品卸は必要な医薬品が滞らないようにしながら利益を確保していた。医薬品卸は,医療機関や保険薬局に高めの納入価を設定するとともに緊急配送など採算性の悪い取組みを極力抑えていた。<br>しかし,離島に立地する保険薬局へのアンケートからは,在庫管理の困難性やサービス水準への不満が指摘された。一方,医薬品卸の事業環境は急速に悪化している。そのため今後,営業所の撤退や配送頻度の低下など,必要な医薬品の迅速な配送に支障をきたす可能性がある。

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参考文献 (25)*注記

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