平穏死のすすめ

  • 石飛 幸三
    東京都世田谷区立特別養護老人ホーム芦花ホーム

書誌事項

タイトル別名
  • Recommending Peaceful Death
  • 平穏死のすすめ : 老衰に医療どこまで
  • ヘイオンシ ノ ススメ : ロウスイ ニ イリョウ ドコ マデ
  • 老衰に医療どこまで
  • How Far Should Medical Care Intervene in Old Age?

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説明

われわれは人生最期の迎え方について,今までになく考えなければならなくなっています。<br>延命治療法は次々と開発されます。医療制度は国民皆保険です。平和な日本は世界一の長寿社会になりました。自分の最期の迎え方を選べるはずなのに,どこまで医療をしなければならないのかわからなくなっています。<br>われわれ人間は自然の生き物です。いずれ老いて衰えて,最期は自分の口で食べなくなります。 それは身体が生きることを終えようとしているからです。必要な水分や栄養の量はどんどん減っていきます。死ぬのだからもう要らないのです。「入れない方がむしろ穏やかに逝ける」のです。<br>昔から老衰での最期は,死のうちで最も穏やかなものであることを人類は知っていました。しかし現代人は死をタブー視して,目の前の事態を回避することだけに拘って,点滴や胃瘻をつけておけばまだ生きられると思って,反って苦しむことになっていたのです。<br>医療は本来人のための科学です。今こそわれわれは,人生の最終章における医療のあり方を検討する時が来ました。私が作った「平穏死」という言葉は,単なる延命治療が意味をなさないのであれば,それをしなくても責任を問われるべきでないという主張の旗印です。<br>「生きて死ぬ」は自然の摂理,老衰における医療を加減できてこそ,現代の医療が完成するのです。

収録刊行物

  • 医療と社会

    医療と社会 25 (1), 59-69, 2015

    公益財団法人 医療科学研究所

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