標津川再生事業の概要と再蛇行化実験の評価  標津川下流域で行った試験的な川の再蛇行化に伴う魚類と生息環境の変化

  • 河口 洋一
    独立行政法人土木研究所自然共生研究センター
  • 中村 太士
    北海道大学大学院農学研究科森林管理保全学講座
  • 萱場 祐一
    独立行政法人土木研究所自然共生研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • Effects of a re-meandering project on the physical habitats and fish in the Shibetsu River

抄録

河道の直線化によってその周辺に残された旧川を利用し,試験的な川の再蛇行化が標津川下流域で実施された.再蛇行前の2001年,再蛇行後の2002年の夏に,直線河道の標津川本川(対照区)と旧川(蛇行区)で,魚類の生息量調査と河道内の物理環境調査を実施した.再蛇行前の旧川は流れのない止水域で,標津川本川と比べ水深が大きく,河床は細かいシルトで覆われていた.この旧川には,ヤチウグイ,フナ属,イトヨ太平洋型,イバラトミヨ淡水型,ウキゴリといった止水性の魚類と,スジエビやウチダザリガニといった甲殻類が非常に多く生息していた.一方,標津川本川は流速の緩い範囲そして水深の浅い環境が全体に少なく,平均流速は速かった.標津川本川には,サクラマス,ウグイ,フクドジョウ,シマウキゴリといった流水性の魚類が生息していたが,これらの生息量は旧川と比べて非常に小さかった.旧川の物理環境は再蛇行後に大きく変化し,水深,流速,河床材料,水面勾配といった物理環境要素は,対照区である標津川本川と蛇行区でほぼ同じ傾向を示した.再蛇行により,蛇行区では縦断そして横断形状の多様化は認められたものの,明瞭な瀬淵構造は見られなかった.再蛇行化によって,旧川の物理環境は止水から流水に変化し,旧川に生息していた止水性の魚類は大きく減少した.一方,蛇行区の湾曲部では,浸食によって水際の河畔林が水中に倒れ込み,この倒流木周辺でサクラマス幼魚や大型のサケ科魚類が確認された.潜水観察や投網の調査で確認したサケ科魚類の個体数は,標津川本川より蛇行区で多かった.しかし,倒流木によって造られる環境は,出水によって消失するため,長期的に利用できる環境ではなかった.蛇行前の旧川は止水性の水生生物が数多く生息しており,今後の蛇行復元事業においては,蛇行復元を計画している旧川の環境と生物相の把握,そして蛇行復元にとどまらず氾濫原の復元も視野に入れた本川と旧川の連結方法の検討が必要だと考えられた.

収録刊行物

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参考文献 (27)*注記

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001204473314048
  • NII論文ID
    130004541683
  • DOI
    10.3825/ece.7.187
  • ISSN
    18825974
    13443755
    http://id.crossref.org/issn/13443755
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • Crossref
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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