がんの集学的治療を断念した患者を支える希望の意味

  • 川端 愛
    聖路加国際大学大学院看護学研究科博士後期課程

書誌事項

タイトル別名
  • The Meaning of Hope:Sustaining Cancer Patients When Multidisciplinary Treatment is Not Effective
  • ガン ノ シュウガクテキ チリョウ オ ダンネン シタ カンジャ オ ササエル キボウ ノ イミ

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説明

<p>要 旨</p><p>本研究の目的は,がんの集学的治療を断念した患者を対象に,希望に関する体験を記述し,患者を支える希望の意味を明らかにすることである.緩和ケア科外来に通院する50~60歳代の患者4名の協力を得て,半構造化面接を実施した.得られたデータは,現象学的アプローチであるGiorgiによる方法論を用いて分析し,固有の経験についてリアリティのある記述を目指した.</p><p>分析の結果,がん治療を断念した患者が一様に認識していたのは《限りある時間》に被投された自己であった.自分自身の死の近さを知りつつも《固有の自己存在》と対峙してきた研究協力者によって語られた希望には,自分自身で在り続けることを可能にする〈私で在ることの肯定〉,他者により自分自身の存在意義が明らかになる〈つながりの意味づけ〉,生物学的な終焉にとらわれない〈新たな未来の見通し〉という意味があった.このような意味を有した希望は,がん体験に特有な喪失や苦痛を経験するなかで,自分自分の存在を見失うことなく,最期まで生き抜こうとする自分を支える力となっていた.</p><p>以上より,がん患者の希望に関する看護を検討する際には,患者から語られる希望それ自体に着目するのではなく,まずは「私」という自己存在と関わり合う能力に注目すべきである.この能力を高めることが,統御のつかない死という存在を前にしてもなお,生きる力となる希望を獲得する可能性に開けていくと考える.</p>

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