落葉樹の展葉に伴うイヌワシAquila chrysaetosの給餌様式の変化

書誌事項

タイトル別名
  • Changes in feeding pattern of Golden Eagle Aquila chrysaetos with leafing of deciduous trees
  • ラクヨウジュ ノ テン ヨウ ニ トモナウ イヌワシ Aquila chrysaetos ノ キュウジ ヨウシキ ノ ヘンカ

この論文をさがす

抄録

イヌワシAquila chrysaetosの生息環境は,一般的に,ステップあるいは森林限界を越えた山岳地帯などの樹木の少ない環境とされるが,その亜種ニホンイヌワシAquila chrysaetos japonicaは,例外的に,ブナFagus crenataに代表される落葉広葉樹林帯に分布している.落葉広葉樹の展葉および落葉による森林空間構造の変化は,ニホンイヌワシの餌選択に大きく影響する可能性があり,それは本亜種の繁殖成功にも影響を与える可能性がある.そこで,本研究では展葉の完了前後におけるニホンイヌワシの給餌様式を明らかにし,それがヒナの成長に与える影響を検討するために,イヌワシ営巣地の対岸にカメラを設置し,給餌動物の種構成,搬入頻度,搬入量を評価した.その結果,ニホンイヌワシの主要な給餌動物はノウサギLepus brachyurusとヘビ類であり,両種を合わせて,全給餌動物の98.3%を占めていた.ノウサギおよびヘビ類の搬入頻度は落葉広葉樹の展葉前後で逆転し,展葉の完了を境に,ヘビ類の値がノウサギを上回った.給餌動物の総搬入量は,ノウサギからヘビ類に切り替わることで減少する傾向があった.観察したつがいの中で,給餌動物の切り替わりが育雛期間中に生じたヒナの全長は,餌の切り替わりが生じなかったヒナに比べ小さかった.以上の結果より,ニホンイヌワシは展葉の進行に伴ってヘビ類に特化した餌利用に切り替わるが,総給餌量が減少することにより,それがヒナの成長に影響を及ぼしたことが示唆された.

収録刊行物

被引用文献 (1)*注記

もっと見る

参考文献 (45)*注記

もっと見る

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ