静脈内鎮静法下で歯科治療を実施した歯科恐怖症を伴う両耳重度難聴者の1症例

DOI
  • 小松 泰典
    奥羽大学歯学部附属病院地域医療支援歯科 奥羽大学歯学部口腔外科学講座歯科麻酔学分野
  • 山家 尚仁
    奥羽大学歯学部附属病院地域医療支援歯科
  • 北條 健太郎
    奥羽大学歯学部附属病院地域医療支援歯科
  • 神庭 一郎
    奥羽大学歯学部歯科保存学講座歯内療法学分野
  • 成田 知史
    奥羽大学歯学部附属病院地域医療支援歯科
  • 小川 幸恵
    奥羽大学歯学部口腔外科学講座歯科麻酔学分野
  • 佐々木 重夫
    奥羽大学歯学部附属病院地域医療支援歯科 奥羽大学歯学部歯科保存学講座歯内療法学分野
  • 川合 宏仁
    奥羽大学歯学部口腔外科学講座歯科麻酔学分野
  • 山崎 信也
    奥羽大学歯学部口腔外科学講座歯科麻酔学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Dental Treatment under Intravenous Sedation for a Patient with Severe Bilateral Deafness and Dental Phobia:A Case Report

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抄録

<p>聴覚障がいとは,音声情報取得やコミュニケーションの障がいを指し,各医療機関において配慮や工夫などの報告が散見される.しかしながら,聴覚障がい者の歯科治療に静脈内鎮静法を適応したという報告はみられない.今回われわれは,歯科恐怖症にて意識下での歯科治療が困難なため,静脈内鎮静法下で実施した両耳重度難聴患者の症例を経験した.</p><p>患者は,初診時29歳の女性で,身長163cm,体重72kgであった.主訴は,下顎右側小臼歯部の自発痛で,また医療全般に対する強い恐怖心の訴えもあり,静脈内鎮静法下での治療の同意を得た.手話のできる職員の常時対応が困難なため,筆談による対応が多くを占め,治療当日の諸注意,治療内容など多岐にわたって筆談で説明した.その結果,診療終了までに約6時間を要したが,患者との信頼関係構築が恐怖心軽減の一助となると考え,鎮静管理以外のインフォームド・コンセントにも時間をかけた.初診から3年9カ月間に,毎回静脈内鎮静法を併用し,のべ21回の治療を実施した.患者の満足度は高く,治療への恐怖心は徐々に軽減している.</p><p>聴覚障がい者の立場になり,時間をかけてインフォームド・コンセントを得る努力が必要であると思われた.また,聴覚障がい者への静脈内鎮静法は,聴覚障がいの程度によっては声かけによる反応が十分に期待できず,混乱を招く可能性があるため,重度聴覚障がい者の場合,Ramsay4~5の鎮静深度が有用であると考えられる.</p>

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