生命人文学の提唱 : 情報学的に展開する研究領域として

書誌事項

タイトル別名
  • Proposal for a humanities approach to life : As a new discipline associated with informatics

この論文をさがす

抄録

この論文で私は、人文系の研究者たちが現代的な生命の問題を議論するための「生命人文学」という新しい研究領域の必要性を提唱する。日本の学術的な生命倫理学は、医学領域に「医療倫理学」の専門分野を確立したが、それに対して、現代的な生命の問題への包括的な人文学のアプローチはいまだ成立していない。私が提唱する「生命人文学」は、次のような問い、たとえば「生命科学の発展によって人間は幸福になれるのか」「科学技術が発展する中で人間はいかにして尊厳を保つことができるのか」「人間が自然環境と調和的な関係を取り結ぶことは可能なのか」「すべての人が充実した生と死を全うすることのできる社会とはどのような社会か」などを議論する。米国やヨーロッパにおいては、この種の研究はどうしてもキリスト教からの大きな影響下に置かれることになるが、宗教教団が生命倫理の問題に対して大きな力を持たない日本においては、宗教的な影響をさほど受けずにこれらの問題を人文学的に議論することができる可能性がある。この研究プロジェクトはインターネットを介して情報や意見をリアルタイムで交換し共有するという高度なスキルを要求するものであるから、情報学と密接に連携した研究開発が必要となるであろう。

収録刊行物

  • 生命倫理

    生命倫理 18 (1), 83-89, 2008

    日本生命倫理学会

参考文献 (13)*注記

もっと見る

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ