障害者歯科診療におけるソフト開口器の有用性に関する研究

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タイトル別名
  • The Usefulness of a Soft Lip and Cheek Retractor in Special Needs Dentistry

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説明

歯科診療および口腔ケアを行う際に,必要な視野が確保できないことは,処置の安全性や確実性の観点から重大な問題となる.そこで,ソフト開口器の形状特性を口腔機能に問題のない成人ボランティア(以下,成人ボランティア)で検討し,さらに障害者においてその有用性を検討した.<br>1.成人ボランティアを対象に,ソフト開口器および口角鉤の形状特性を画像上で比較した.その結果,ソフト開口器装着時では,口腔内の視野面積は小さかった.また偏平率は小さく,より類円形の形状を示した.さらに右口角を右方へ牽引したときの口唇の可動性(変位量)は,右方牽引側,対側ともソフト開口器装着時のほうが大きかった(右方牽引側p<0.01,対側p<0.05).<br>2.成人ボランティアを対象に,ソフト開口器と口角鉤の使用感についてVAS変法を用い比較した.その結果,「装着感」「痛み」「5分間の装着感」の3項目において,ソフト開口器のほうが快適性に優れていた(p<0.01).<br>3.障害者を対象に,ソフト開口器未使用および使用時において,術者ブラッシング時の視野確保の可否を口唇圧排の困難度で比較した.その結果,ソフト開口器使用時に口唇圧排の困難度が減少した(p<0.01).また口唇圧排が困難で「磨けない」と評価された部位がなくなった.<br>以上より,ソフト開口器は,被装着者にとって負担が少なくかつ術者にとって十分な視野確保が可能となり,強固な口唇閉鎖のため歯科診療や口腔ケアが困難な障害者においても有用であることが示唆された.

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