起立不全のアジアゾウにおける頸椎および頭位胸椎の変形

  • 郡司 芽久
    東京大学総合研究博物館 東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻
  • 高井 昭
    神戸市立王子動物園
  • 遠藤 秀紀
    東京大学総合研究博物館 東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻

書誌事項

タイトル別名
  • Deformations of the Cervical and Cranial Thoracic Vertebrae in a Bedridden Asian Elephant

抄録

起立不全のアジアゾウ( Elephas maximus)における頸部骨格を形態学的に検討し,起立不全時の長期間に渡る横臥姿勢が頸部に与える影響について考察した。本研究で使用したアジアゾウは1歳時に起立不能になり,その後3年半,横臥位で飼育された。ゾウの死後,CTスキャンを用いて頸部骨格を観察したところ,第二頸椎から第七頸椎,第一胸椎から第三胸椎において,椎間関節面の異常形成が認められた。また,第五・第六頸椎の椎間関節および第一・第二胸椎の椎間関節では,関節突起の部分的な癒合が確認された。第六頸椎の後関節突起は,第七頸椎の前関節突起と完全に癒合していた。起立不全のアジアゾウの頸部骨格を他のアジアゾウと比較したところ,起立不全の個体では,頸部が 30.4度背側に過剰屈曲していることが明らかになった。起立不全下での横臥生活では,頭頸部にかかる重力負荷が減少することにより,項靭帯は収縮する。これに伴い,頸部は過剰に背屈され,椎骨の関節突起間には圧縮力が発生すると考えられる。椎骨間に働く圧縮力は,関節炎や骨破壊を引き起こし,その修復過程において異常な化骨形成を促進する可能性がある。実際に,起立不全のアジアゾウでは,関節突起の癒合は,圧縮力が収束すると考えられる頸胸接合部で集中的に観察された。本研究は,横臥姿勢時の項靭帯の収縮は,大型哺乳類において,頸部の過剰背屈および椎骨関節突起の異常形成を引き起こす可能性があると結論付けた。

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参考文献 (5)*注記

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001204489088384
  • NII論文ID
    130004714263
  • DOI
    10.5686/jjzwm.19.79
  • ISSN
    2185744X
    13426133
  • 本文言語コード
    en
  • データソース種別
    • JaLC
    • Crossref
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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