低酸素環境に適応したげっ歯類,ハダカデバネズミの老化耐性・がん化耐性

DOI オープンアクセス
  • 三浦 恭子
    北海道大学遺伝子病制御研究所動物機能医科学研究室

説明

ハダカデバネズミ(naked mole-rat, heterocephalusglaber, デバ)は,その名の通り裸で出歯のげっ歯類である(実はよく見ると感覚毛と呼ばれる毛がまばらに生えている)(表紙写真).自然下ではエチオピア・ケニア・ソマリアの地下に,数十~数百匹の集団で生息する.ガス交換が乏しく気温が安定している地下トンネルで暮らしており,トンネル内の位置によってはかなりの低酸素(~7%)かつ高二酸化炭素(<10%)環境になる.デバは視覚が退化しており,ヘモグロビンの酸素親和性が高く,また電位依存性ナトリウムチャネル(Nav1.7 voltage-gated sodium channel)の変異により酸への非感受性を示すことが報告されている.また,体の恒温機能はほとんど失われており,外温性で低体温(約32℃)である.研究室ではアクリルボックスをパイプで複数連結したケージを用い,温度30℃・湿度60%に調節された通常大気下で飼育を行っている.自然下では根茎を食べているが,実験飼育下ではイモ・ニンジン・リンゴ・オートミールなどを与えている.<br>デバは「真社会性」と呼ばれる分業制の社会を形成することで知られている.真社会性とは,昆虫のアリ,ハチ,シロアリなどでみられる,2世代以上が共存し繁殖個体とその繁殖を手伝う不妊個体から成る社会形態を指す.現在確認されている真社会性ほ乳類は,デバと近縁のダマラランドデバネズミだけである.コロニー内で繁殖を行うのは1匹の女王と1~3匹の王のみで,その他の個体は,生殖機能が未発達なままワーカーやソルジャーとして巣内の仕事に携わる.女王化のメカニズムは,現在のところほとんど分かっていない.我々は,MRIを用いたデバ三次元脳アトラスの作製を行い,ワーカーが女王になる際の脳内変化について解析を進めている(関ら,未発表).

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 53 (3), 225-227, 2017

    公益社団法人 日本薬学会

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001204499041152
  • NII論文ID
    130005398283
  • DOI
    10.14894/faruawpsj.53.3_225
  • ISSN
    21897026
    00148601
  • 本文言語コード
    ja
  • 資料種別
    journal article
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ