生体分子を高効率で標識する超高速クリック反応

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  • 吉田 優
    東京医科歯科大学生体材料工学研究所

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抄録

ライフサイエンス研究において,タンパク質に対して蛍光の機能を付与したい場合に,観測対象の生体分子本来の機能を保持したまま蛍光団などを導入できる手法として,「クリックケミストリー」が利用されるようになってきた.なかでも,アジドと末端アルキンとの銅触媒を用いるヒュスゲン反応や,無触媒で進行するアジドと環状アルキンとの反応が広範な場面で用いられている.しかし,生体内での局在を可視化したい分子に対する18F(t1/2約110分)のような半減期の短い放射性同位体での標識の需要等を背景に,より高速で進行するクリック反応が今なお求められている.Kolodychらは,イムノアッセイを利用したハイスループットスクリーニング手法による反応開発を提案し,新たな官能基の組み合わせである,シドノン類と末端アルキンとのクリック反応の発見に成功した.また,本反応がタンパク質の蛍光標識に有用であることを見いだしている(図1-1)). さらに最近,同グループは,4-フルオロシドノンが末端および環状アルキンと効率よく反応し,特に後者との反応がきわめて速やかに進行することを報告したので,本稿で紹介する.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Kolodych S. et al., Angew. Chem., Int. Ed., 52, 12056–12060(2013). <br>2) Liu H. et al., Angew. Chem., Int. Ed., 55, 12073–12077(2016). <br>3) Dommerholt J. et al., Angew. Chem., Int. Ed., 49, 9422–9425(2016).

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 53 (4), 359-359, 2017

    公益社団法人 日本薬学会

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