飯田賞奨励賞を受賞して

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抄録

このたびは,日本義肢装具学会の栄誉ある飯田賞奨励賞を賜わることができ大変嬉しく存じます.受賞にあたり,ご推薦いただいた日本理学療法士協会ならびに日本義肢装具学会飯田賞選考委員会の皆様には心より厚くお礼申し上げます.<BR>本稿を書くにあたり,私の理学療法士(PT)人生を少し遡り記憶をたどって,お世話になった,また心に残る諸先生方に感謝の意を申し上げたく存じます.<BR>今回の受賞理由は「脳卒中下肢装具の研究・開発に対する貢献」とのことですが,これは,私的病院でのPT臨床経験に基づいた学会発表が主で,回復期10年と慢性期20年の業績と経緯であります.私どもが行ってきたことは,脳卒中異常歩行すなわち,立位歩行姿勢の形の崩れを3D下肢装具類(プラスチック製長下肢装具 : P. KAFO,調節補高靴,ツイスター)を用いて姿勢を正常化する手法と回復に応じて装具類を簡略化することを開発してきました.これは3D下肢装具類という物を使った歩行のファシリテーションを意味し,歩行姿勢の形を正すことが歩行効率を上げるという考え方,捉え方であります.また,脳卒中歩行病態は複雑多岐にわたりますので異常歩行の形を整えるためには,身体基本面を3Dに微調整できる機能が必要であり,それを3D下肢装具類で具現化いたしました.本装具療法の適応は,足部から骨盤帯に至る荷重連鎖障害が著明で,膝折れは止まっているが比較的重度な障害を対象としています.すなわち,短下肢装具では歩行自立に難渋すると予測される回復期症例,または,すでに不十分な歩行(近位監視の模擬歩行)レベルに留まっている維持期症例者を適応といたします.以上,重度から軽度の片麻痺異常サインに対応できる装具の力学的原理,調節性3D下肢装具類,これらを用いた片麻痺病態に応じた異常歩行の制御手法を開発してきた次第です.<BR>ことの発端は,脳卒中患者が主である400床のリハビリテーション病院にて始まりました.当時の金属支柱付き長・短下肢装具,シングルクレンザックによる下肢装具療法は,なかなか思うようにいかず苦労を重ねたことでした.1978年4月にその苦労も解決しないまま転勤,急性期・回復期の総合病院勤務,ここでP. KAFO装具製作の切っ掛けとなりました.そして,P. KAFO装着患者が走るような速歩き訓練を行うようになり,顔つきも生き生きとし,これが本当のmotivationだと強く認識したことが私の心に残る一幕となりました.今思えば「この一幕」が私の苦渋の始まりでもあり,生涯のライフワークになったと自負しています.<BR>学会発表は前述のP. KAFOを中心に臨床データをまとめ,物の発表や生体力学の推論,統計学的検索,機械工学など品を替え,学会を替え発表していました.あまりにも同じような発表をするために,リハ医巨匠のある大先生にお叱りを受ける破目となったことは今も強く心に残っています.しかし,患者がよくなることを考えると学会発表をやめることができず,続けることを決意しました.今思えば何もわからず,ただよくなるとか,効果があるだの,手前みそばかりで学会出席者の方々には多大に不愉快な思いをさせてしまい誠に申し訳なく反省一途であります.<BR>このような内容にもかかわらず,ご指導ご示唆をいただきお付き合いくださりました愛媛大学名誉教授 野島元雄先生に本稿をお借りして心よりお礼申し上げます.先生のおかげでISPO学会発表が続き,P. KAFO装具の開発畑となりました.また,ISPOを通じて発表の英語に困っていたところを助けてくださった,佐賀医科大学名誉教授 渡辺英夫先生,先生はP. KAFO療法に耳を傾けてくださり,2006年10月第22回日本義肢装具学会(熊本)シンポジウム1「脳卒中の短下肢装具—病態によるベストな選択—」を掲げられ,私もその1人として参加させていただき翌2007年の「日本義肢装具学会誌」Vol. 23, No. 2の特集となりました.このテーマを通じて我々なりの脳卒中歩行病態をまとめることができました.本当にありがとうございます.もう1人,私どもにご尽力くださいました,日本理学療法士協会 前会長・中屋久長先生です.先生からは論文投稿に対する示唆と協会主催の現職者講習会開催の道を開いていただきました.厚くお礼申し上げます.<BR>まだまだ多くの方々のお力添えを得てP. KAFO療法3Dアプローチは何とか生き残っています.これからも現日本理学療法士協会の役員の方々には多大なご支援を賜わりたく私どもも努力いたしたいと存じ上げます.<BR>最後に,多大な心ある支援を賜わっています高知の当院・横浜病院理事長 宇田耕也氏に心より厚く感謝申し上げます.そして,日野 工PTはじめ我々仲間達に深謝します.このたびは飯田賞奨励賞を賜り本当にありがとうございました.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001204539705984
  • NII論文ID
    10024808717
  • NII書誌ID
    AN1006683X
  • DOI
    10.11267/jspo.25.8
  • ISSN
    18840566
    09104720
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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