通過儀礼・年中行事から見た町家の伝統的生活領域に関する研究
書誌事項
- タイトル別名
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- Research into traditional patterns of life in a machiya through ceremonies, celebrations and events
抄録
本研究は岡山県倉敷市下津井地区及び小田郡矢掛町の伝統的町屋に関するもので,生活民俗として伝えられて来た,出産,婚礼,葬式などの通過儀礼や,正月,盆,講などの年中行事から町家の伝統的生活領域について明らかにしようとするものである。具体的には,伝統的町家67例について,建築平面の実測調査,復元調査を行ない,その図面にもとづいてその家の年長者から,伝えられ行なわれて来たり,記憶されている生活民俗を聞きとり調査した。調査の結果,次のことが明らかになった。①主な通過儀礼・年中行事は町家全体で行なわれ,そのあるものは,行なわれる場所が決まっている。②行なわれる場所から儀礼・行事を見ると,一定の関係がある。それは同じ場所で行なわれる関係,分かれて行なわれる関係である。又関係が定まらないものもある。このうち一定の相互関係を持つものとして〈出産〉〈婚礼〉〈葬式〉〈盆〉の4つが抽出された。③通過儀礼・年中行事の相互関係をまとめると,地域差,町屋の形式の差が概ね〔出産〕〔盆(法事)葬式〕〔(婚礼(講)〕の3つのグループに分かれる。これらはさらに生者の通過儀礼と,死者の通過儀礼に大別される。④座敷を持つ町家や,座敷数の多い町家程,多くの場所を使い分けて儀礼,行事が行なわれる。しかし座敷が3つ以上になっても余り変りはない。⑤1列型平面の町家のオクノマには異なった性格の使われ方がある。ひとつは座敷として盆や葬式に使われ,他のひとつは,元旦の食事や普段の食事に使われる。また両者の中間の使われ方もある。⑥2階を持つ町家の1階では死者の通過儀礼が分離されて行なわれる。一方出産,婚礼,祝いは別の場所で行なわれ,生,死の儀礼は2分されている。⑦2階を持たない町家では,2つの使われ方がある。ひとつは各場所を使い分ける場合で下津井で行なわれている。他は数室を連ねて使う場合で矢掛で行なわれている。両者の違いは,町家の発展形式や他の種類の住居形式に関係すると思われるが,今後の課題である。
収録刊行物
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- 住宅建築研究所報
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住宅建築研究所報 14 (0), 95-104, 1988
一般財団法人 住総研
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001204547207296
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- NII論文ID
- 130006730041
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- ISSN
- 24239860
- 02865947
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可