北西アフリカの伝統的集落形態に関する研究
書誌事項
- タイトル別名
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- A study on dwelling forms of traditional villages of Northwestern Africa
抄録
本研究は,アフリカ北西部マグリブ地方における伝統的集落を対象とする調査・研究で,この地域の先住民であるベルベル人の住居・集落を対象としたフィールドワークを通して,その空間的特性を明らかにすることを目的としている。今回の調査地域はモロッコ南部である。マグリブ地方の集落・都市空間を構成する特徴的な要素にメディナとカスバがある。これらはベルベル人特有の住形式であるクサールやティグレムトが起源であるといわれている。ティグレムトは3,4階建の住居で,ほぼ正方形の平面形状をもち,非常時の穀倉としても使用される。四周はほとんど開口部のない厚い壁で囲まれ,隅角部には装飾が施された監視塔(ボルジュ)が立てられている。内部の中央にはドゥアヤと呼ばれる中庭をもつものが多い。一方,クサールとはベルベル人の集落の総称であるが,アスールという高い外壁で周囲を囲み,外壁に沿って数ヵ所にポルジュを立てるのが一般的である。クサールは,中央に中庭をもついわゆるロ字型住居で構成され,内部の通路は複雑に入り組んでいる。ベルベル人の住居・集落は外部に対しての開口部が少なく,極端に閉鎖性の高い住形式となっている。その要因として,遊牧民などの外敵の襲来に備えるという防御的な面と,極度の乾燥や強烈な日差し,砂風などの過酷な自然条件に対処するためという風土上の点が挙げられる。外部に対して閉じつつ,かつ高度に密集しながら外敵や自然環境から身を守るためには,ドゥアヤという中庭はきわめて巧妙な装置であり,採光や通風のみならず,開放感とプライパシーを両立させたり,住居が増殖してゆく際の形態的な歪みの吸収機構となったり,多彩な機能をもつ。本論ではその中でも視覚的な効果に着目し,住居内部における立体角比を簡単なモデルを用いて計量することによって,ドゥアヤが採光上有効に機能していることを検証した。
収録刊行物
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- 住宅総合研究財団研究年報
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住宅総合研究財団研究年報 23 (0), 107-116, 1997
一般財団法人 住総研
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001204548960640
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- NII論文ID
- 130006730456
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- ISSN
- 24239879
- 09161864
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可