イノシシの飼育管理下における社会的順位とその形成過程

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タイトル別名
  • Dominance Order and its Formation in Wild Boars, Sus scrofa leucomystax, under Captive Conditions
  • Dominance Order and its Formation in Wi

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抄録

イノシシにおける採食時の社会的順位とその形成過程について調査した。飼育管理下にあるニホンイノシシ(Sus scrofa leucomystax)の繁殖群2群(A群 : 雄1頭・雌5頭、B群 : 雄1頭・雌6頭)と育成群1群(去勢雄3頭・雌7頭)を供試した。群の頭数プラス一箇所のスポットに餌を分けて与え、スポット間の移動回数、各スポットにおける同時採食頭数および同時使用スポット数を記した。繁殖群におけるスポット間の自発的移動回数は、雄、最優位雌、最劣位雌の間に差は認められなかった。他個体の接近による回避的移動は雄では見られず、最劣位雌は最優位雌よりその移動回数が有意に多かった。繁殖群の採食時における社会的順位はブタと同様に直線的であった。本調査開始以前は一箇所で給餌が行なわれていた育成群では、スポット給餌開始後、徐々に自発的移動が減少し、回避的移動が増加した。繁殖群では同一スポット内で2個体以上が同時に採食することはなかった。それに対して育成群においては、スポット給餌開始直後の同時採食頭数は最大で7頭であったが3週間後には3頭にまで減少した。繁殖群における回避的移動は優位個体の接近によるものであり、スポット内での個体間の接触はほとんどなかった。一方、育成群ではスポット内での闘争が多く観察され、他個体の接近だけで回避的移動が起こることはほとんどなかった。育成期にこのようなスポット給餌を行なうことにより、個体間の優劣関係の形成が促進されると考えられた。繁殖群における採食時の順位は採食時以外の順位と一致していることも観察された。このスポット給餌は、イノシシのように取り扱いの困難な動物における社会的順位を調べる方法として、飼料争奪法よりも容易な方法と考えられた。日本家畜管理学会誌、33(2) : 33-38.1997.1997年4月30日受付1997年6月9日受理

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