山地傾斜地における夏季放牧牛群の休息場所の気象的特徴

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タイトル別名
  • Climatic Characteristics of the Resting for Grazing Cattle in a Hilly Pasture during Summer Season
  • サンチ ケイシャチ ニ オケル カキ ホウボクギュウグン ノ キュウソク バショ ノ キショウテキ トクチョウ

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抄録

山地傾斜地の放牧地において、牧区内の風速や気温の分布と牛群の休息場所選択の関連を明らかにするために、夏季放牧期間中(7〜9月)ホルスタイン種およびヘレフォード種育成牛37〜39頭からなる牛群を地形条件の異なる3つの牧区で輪換放牧し、各牧区での牛群の休息場所を延べ18日間観察した。14 : 00、22 : 00、2 : 00、10 : 00の各時刻周辺において、全頭の80%以上が休息している場合の群の位置をその時間帯の休息場所として記録した。さらに各牧区を地形や植生の違いにより5〜6の区画に区分し、各区画の特徴を代表する定点で風速および気温を測定した。これらから休息場所として利用した区画の気象的特徴を検討した。得られた結果は次のとおりである。1)各観察時における区画ごとの風速は、観察期間を通して0.01〜5.25m/sまで変動し、その平均は0.94m/sであった。また、気温は12.9〜31.5℃まで変動し、その平均は21.4℃であった。2)南〜南東向き斜面しか存在しない1つの牧区では、各観察日における風速の平均区画間差は0.6〜1.2m/sと他の2つの牧区よりも小さかった(P<0.05)。牧区内の気温の区画間差は1〜3℃程度と、いずれの牧区も同様であった。3)牧区内の標高差か約60mと大きかった2つの牧区では、標高差が40mであった1つの牧区に比べて牧区内の風速や気温の分布に、観察期間を通して一定の傾向がみられた。4)14 : 00、10 : 00の昼間の休息場所は、雨天時を除く計34回の観察中9回(36%)が水場周辺部であった。残る25回の観察中22回(88%)は牧区内で風速が最大の区画での観察であり、雨天時や水場付近で休息した場合以外は相対的に風速の強い区画に集中した(P<0.001)。夜間の休息場所の気象的特徴は、22 : 00と2 : 00の各時間帯で異なった。22 : 00の夜間の休息場所は、雨天時を除く計16回の観察中1回(6%)か水場周辺部であった。残る15回の観察中13回(87%)が、牧区内で最も気温が低い区画での観察であり、雨天時や水場付近で休息した場合以外は相対的に気温の低い区画に集中した(P<0.001)。一方、2 : 00の休息場所は22 : 00とほとんど変化せず、これらの場所には明確な気象的特徴はみられなかった。日本家畜管理学会誌、34(3) : 77-85、19991998年3月16日受付1998年11月26日受理

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参考文献 (16)*注記

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